inserted by FC2 system

吟遊詞人7周年記念小説「ジョングルールの七不思議」

第7話 sha la la.../Written By 深駆
しばらく私は上の空だった。遠くから何だかドタバタいう音と、それ以上にはっきりとした疾風の声が聞こえる。
「美寛…美寛?そんな大きな声出さなくてもいいじゃない。大丈夫?」
「あ、うん、ごめん…なんか、ショックだったの。ねぇ、それじゃあ…どうするの?」
戸惑う私を無視して、疾風は金庫に近づく。まさか…。
「ね、疾風!まだ開けようとしないでよ!!さっき私、もう1回目のチャンスを使っちゃったし…それに疾風だって、まだ何も考えていないじゃ…」
「違うよ、美寛。考えたから開けようとしているの」
「ホント!?さっきの言葉の意味、分かったの!!?」
驚く私を尻目に、疾風は金庫に向かう。
「ああ。『7』の思考をたどるうちに、ってあっただろ?ちょっと考えれば分かる。『7』の思考パターンは?」
「そんなの知らないよ!ただ7尽くしって事だけじゃない!!」
「それで十分だよ。そこの紙に書いてあるから、見て」
そう言って疾風は金庫と向かい合う。私は急いで、さっきまで疾風が持っていた紙を見た。そこには筆算が書かれている。そして、その下では今まで手に入れたヒントが1番目→4番目→3番目→2番目の順に並べて書いてあった。
「えっ、えっ!?ねぇ疾風、これ一体どういう事!!?」
私は思わず尋ねる。疾風は私のほうを振り向かずに答えた。
「その順につなぐと823543になる…さっき計算してわかったけどね、その数…」
ガチャン、という音がした。金庫が開いたのだ。それを見届けてから、疾風が私のほうを振り向く。疾風はちょっぴり笑った。
「7の7乗なんだよ」

私は目が眩むような思いだった。頭に思い浮かんだのは、ただ一言……すごい…。
私は疾風の元へ駆け寄る。いったい、何があるんだろう?
「これ…みたいだね」
疾風は金庫の中から何かを取り出す。そして、私の前に掲げてくれる。
「えっ、これ……スゴイ!!」
私の目の前に掲げられたものは、1つのペンダントだった。シンプルな銀色、そして下には7つの小さな赤い宝石が花の形を成して、さりげなく輝いている。私はうっとりとしてしまった。きっとカジノで7が3つ揃った時も、こういう表情になるのだろう。
「カーバンクルかな」
「カーバンクル?」
「角が丸く削られているルビーの事。…どうせイミテーションだろうけど」
私は疾風に、ペンダントを首からかけさせてもらう。なんだか、少し大人になったみたい…。目の前でちょっぴり笑ってくれる疾風の存在が、私をますます大人にさせてくれる。
「まあ…何もないよりはマシか」
疾風の言葉は、きっと口だけ…。疾風だってうれしいに違いない。だって、こんなに笑顔の私が傍にいるんだもの。嬉しいに決まってるよね。
「うん、疾風…」
「何?」
「ありがとう」
私のペンダントが、疾風の胸のあたりにあたる。そしてちょっぴり、沈黙。
「さ、帰ろうか」
「うん!!……あれ?」
そこで私は気がついた。金庫の中に、まだ何かが残っている。
「疾風、金庫の中…紙が入ってない?」
「え?…あ、本当だ」
疾風は紙を取り出す。そこにはこう書かれていた。

「見事だった。この扉を開けた者が、7をリユニオンしたもの、それを継いでいくのだ。

目映い紅玉の起こす7つの風 蟹とライオンが見守る7つの月 賢人の歩むマナの地は7つの星 
同名の聡明な二人は7つの夢 光る北斗七星が照らす7つの愛 孤城落日の七色図式は7つの時
荘厳で温和な煙草は7つの闇

『7』より」


最初に戻る前を読む続きを読む

inserted by FC2 system