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さくら


穏やかな 春の陽射しに
花弁が 舞い落ちてく
あの日見た 粉雪に似た
寂しさが 心を縛る

何年も 昔のことが
こんなにも 沁みるなんてね
鴨川の 水に委ねた
純潔な 花弁のように

あれだけ傍で 同じ未来を
望んでいた筈なのにね
困ったように 笑い合っては
手探りした 日々は遙か

青白い月 水面のさくら
何も知らず 流れてゆく
消えないように 死なないように
両手で今 触ってみる

麗わしい 二条大路は
霞まずに ただゆるやかに
冷たさで 傷付けぬように
この心 撫でてゆくから

これ以上 思い出すのは
止めようと 空を仰いだ
アルバムの 次のページを
めくりつつ サヨナラ告げた

車も何も通らぬ道で
しゃがみ込んで 小石投げた
耳にひびいた 澄んだ水音
明日は今 此処にあるよ

もう大丈夫 水面のさくら
すくい上げて 空に還そう
消さないように 書かないように
大通りに 足を向ける
もどる

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