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恋人はネコ☆ 〜Cat I love you!〜

9ひき目☆4コママンガでも読んでるみたいに
(1)苗字 その1
「ありがとうございましたー」
百円ショップで買い物を終えた美菜緒。
「あれ?よーじ、どこ行っちゃったんだろ」
一緒に来た筈のよーじが居ないことに気づいた美菜緒は、きょろきょろと店内を見廻す。と。
「あ、居た…って、何やってんのよ、よーじ」
美菜緒はよーじの姿を、印鑑を売っているコーナーの前に見つけた。しゃがみこみ、印鑑のショーケースをぐるぐると廻しながら、何やら必死な形相を見せている。
「…ない」
「へ?」
普段より若干低めのトーンなよーじの呟きに、美菜緒はきょとんとした。
「オレのだけ、ない」
「…はあ?」
よーじは美菜緒の方を向き、目に涙を浮かべながら大声をあげる。
「だってだってえ、みなおの(宮崎)もてっちゃんの(犬養)もちゃんと置いてあるのに、オレの(音桐)だけ置いてないなんてフコーヘーだと思わない?!オレだってこーゆーのでぐるぐるしながら自分のヤツさがしたいなのお!!」
美菜緒は大きな大きな溜め息をついて言った。
「あんたね…自分の苗字の珍しさ分かって言ってる?」

(2)苗字 その2
「そーそー、ミョージってゆったらねえ」
百円ショップからの帰り道、何とか機嫌を取り戻したよーじが言う。
「オレ、夏休み前にこんなコトあったなのお」

「追試で満点なのはいいけどな、音桐」
教壇でテスト用紙(追試の)を返却しながら教師が言う。
「お前、自分の名前をひらがなで書くのはやめろよ、高1だろ」
「あ、しの…じゃない、蒲池センセー」
鉄が挙手し立ち上がりながら、“しのぶちゃん”と呼びたくなるのをこらえながら言う。
「こいつの“よーじ”って名前、ひらがなで書くのが本名なんすよ。だからひらがななのは仕方ないっつーか…」
「いや、それは俺も知ってるが…だからって苗字までひらがなで書く必要は無いだろ」
「へ?」
鉄はよーじの手にあるテスト用紙を覗き込む。その氏名の欄には、大きく元気の良い(そして雑な)筆跡で“おとぎりよーじ”と書いてあった。鉄はしばらく呆気に取られていたが、呆れ顔でよーじにツッコんだ。
「…よーじ、お前な…」
「えーっ、だって漢字で書くのめんどくさいんだもーん」
「自分の苗字ぐらいめんどくさがんなっ!つーかそんなめんどくせえ字でもねえじゃねえかっ!!」

「ってゆわれてさあ。なんでだろーね?」
「…さあ、なんででしょうね…」
美菜緒もやはり、鉄と同じような表情で頭を抱えていた。

(3)苗字 その3
「そーいえばさあ、みなおのミョージって“宮崎”だったよねえ?」
同じ道すがら、よーじが更に話題を変える。
「うん、そうだけど?」
「それってさあ、やっぱ宮崎出身とかだったりするなのお?」
「あー、よく言われるケド違うわよ。私、生まれも育ちも東京だし」
「ええっ?!!」
その瞬間、背後に“ガーン”という文字が見えてもおかしくないくらいよーじは驚嘆の表情を見せた。
「え、私今そんなまずい発言した…?」
「そんなっ、宮崎さんが宮崎出身じゃないなんてっ!ヒガシナントカ知事さんとか関係ないなのお?!プロ野球のキャンプとかは?!」
「…なんでそんなに宮崎県に詳しいのよ」

(4)タイトル
「ねえねえみなおっ!“こいねこ”って、春の季語らしいよおっ!!」
「ええっ?」

猫の交尾期は年に四回あるが、もっとも多いのが春である。(中略)昼夜を問わずもの狂おしく争うかと思うと、切ない声で鳴き続ける。幾日もさまよったあげく、傷つき汚れて帰って来る姿は哀れである。俳句独特の季語の一つで、定着したのは芭蕉の時代といわれる。(大野林火著『ハンディ版 入門歳時記』角川書店より引用)

「…なんか…ちょっとさみしいなのお…」
「確かにビミョーにがっかりするわね…」

(5)体質 その1
猫背、猫舌、お魚とミルクが大好き、反射神経に優れるetc...
そんなふうにネコっぽさ満載のよーじを見ていると、色々試してみたくなる。

そんな或る日の朝。
「ふあー、今日の朝ごはんはサンドイッチなのおー☆」
満面の笑みで食卓につくよーじ。
「たまにはこんなのもアリかと思って。さ、召し上がれ」
「はーいっ、いっただっきまーっすっ☆」
よーじはサンドイッチを一つ手に取り、むしゃむしゃと頬張る。
「んーっ、このツナサンドめちゃくちゃおいしいなのおーっ☆相変わらずみなお料理じょーずなのおー☆」
「そ、そう…それなら、良かったわ…」

やっぱりよーじはネコっぽい。
よーじのぶんのツナサンドの中身は、実はキャットフードの缶詰だったりする。
…が、そんなことをよーじには絶対に言えない。

(6)体質 その2
よーじの家で夕食を作っていて、ふと気がついた。
「あら?この家、研ぎ石なんかあったんだ」
流し台の下の棚に、包丁用の研ぎ石があった。
「うん、あるよお」
「でもあんた、包丁なんてほとんど使ったことないわよね?」
「ふぇ?それって爪研ぐのに使うモンじゃないなのお?」
そういうよーじの手はネコの手で、その爪はきらりと尖っていた。
「梶助おじさんがねえ、柱とかでガリガリやるのはおぎょーぎが悪いってゆってたからねえ、そーゆーの使ってやってるなのお」
「…ああ、そう」

(7)体質 その3
夜、テレビを二人で見ている時。
「ねえ、よーじ、ひとつ確認したいことがあるんだけど」
「ふぇ?なあに?」
「ちょっと、手ぇ出して。手のひらを上にして」
よーじはきょとんとした顔で、ネコ手を差し出した。
その手の中央部分に恐る恐る指を差し出し、ゆっくりと押してみた。

ぷに。

「はっ…やっぱり気持ちいい…っ」
ネコの肉球は触り心地が良いという話を聞いていたが、本当だったんだなあ。
そう思うと、肉球をぎゅうぎゅうと押し続けるのをやめることが出来なくなった。
「ふあっ…こ、こそばゆいなのおっ…」
そういうよーじの顔はくすぐったそうにほころんでいた。

(8)体質 その4
よーじ宅での焼肉パーティーでのこと。
「犬養ってさあ、一応今犬の身体よね?」
「んあ?そうっすけど?」
手(つーか前足)を器用に扱い、肉をはぐはぐと頬張る犬養。
「犬ってそんな大量のお肉消化出来るんだっけ?割とさっきから食べてると思うんだケド…」
「んー…ま、大丈夫なんじゃないっすか?…あっ、よーじ、それ俺が狙ってた肉!」
自分の身体のことなのにそんなんでええんかいっ、とツッコむ隙はなかった。

(9)誕生日
「へぇー、よーじの誕生日って“猫の日”なんだぁ」
「うんっ、2月22日って“にゃんにゃんにゃん”ってゴロ合わせできるでしょ?だから猫の日なんだってえ」
「あ、しかも2月22日なら星座はうお座じゃない。あんたどんだけおあつらえ向きなのよ」
「へへー、すごい?すごい?」
「別に褒めることではないけどね…そんじゃ、犬養の誕生日も“犬の日”だったりするの?」
「あ、いや…俺は4月1日生まれなんで…」
「ちなみに犬の日は“わんわんわん”のゴロ合わせで11月1日らしいよお」
「星座もおひつじ座とか全然関係ねーし…もうちょっと良い誕生日にしてくれよ作者ーっ!!」
「…まぁ、私達に嘆かれてもねえ」

(10)看板娘 その1
「祐姫、ちょっといいか」
ゆんの部屋に入ってくる梶助。
「なあに、パパ?」
「あづさ君がしばらく来れなくなってしまったんだ。すまないが、お前少しの間受付やってもらっていいか?」
「えっ、ゆんがっ?!」
病院の受付ってことは、言わば“看板娘”ってことっ?!わー、なんかそんな響き憧れちゃう♪
ゆんは妄想を散々めぐらせた結果、満面の笑みで言った。
「まかせてっ!ゆん、ガンバるからっ!!」

担当の者が急病のため、
院長の娘が臨時で受付をしております
至らない点も多いと思いますが、
どうかご了承ください
                院長

「…パパ、何これ…?」
ゆんは、受付にでかでかと張り出された文字を睨んでいた。
「いや、ふつーに考えて12歳のガキんちょが受付やってたらヘンだろ」
「ひどいっ!ゆん、パパを信じてたのにーっ!!」
ゆんに泣きつかれ、梶助は呆れ顔でぽつりと零した。
「何をだよ…」

(11)看板娘 その2
「あの、先生…?」
「何ですか」
診察室で犬の診察をしている梶助に、その飼い主が心配そうに語りかける。
「受付に娘さんを置いてらっしゃいますけど、その…大丈夫ですの?カルテ出す時にものすごい音を立ててましたけれど…」

別のクライアント曰く。
「さっき豪快につり銭間違えてたみたいですけど、大丈夫なんですか?」
また別のクライアント曰く。
「うちの子、あの受付さんにめちゃめちゃ吠えられてましたけど…」
またまた別のクライアント曰く。
「あの女の子、包帯に絡まってるみたいになってたわよ…」

「……」
梶助は携帯電話に手を伸ばした。

「いらっしゃいませー、今日はどうされました?」
満面の笑みで受付をしているのは、美菜緒だった。
「全くーっ、なんでゆんじゃなくて美菜緒が看板娘なのよう」
奥の部屋でゆんは、ふくれっ面になっていた。
「うーん、まあ、ゆんがどうだったかはだいたい想像はつくケド…」
美菜緒の様子を見に来たよーじは、苦笑いしながらゆんをなだめていた。


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あとがき
今回は小ネタを11本並べてみました。
もうどうしようもなくくっだらない話ですが、一応伏線とか張ってあるんで気をつけてくださいね(笑)。
ちなみに11本目で梶助おじさんが電話かけてるシーンは、美菜緒に直接かけてるかよーじを経由しているかは想像にお任せします(爆)。
どーでもいいけど、ブログであんな生々しい話書いてる傍らでこんなバカな話も書くってどうなのかしらw

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