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かぜのうた

参考 〜蛇足の作風〜

本作「かぜのうた」は自分のことを「推理小説大好きっ子」とさえいう、雪川美寛の一人称で書かれているため、地の文でミステリの雑多なネタが乱発されます(苦笑)。出典がどこにあるか、ここにメモ的に記そうと思います。気になったシーンがあればどうぞ参考になさってください。ネタバレにからむ部分は曖昧なままにしています。その他、ゲームの出典やふと思った特別な描写へのコメントなどもここに書いておきます。いっぱい出てくるので(?)RPG「Final Fantasy」の事はFFと略記させていただきます。作家名敬称略深謝。

第1章…推理小説としては安穏に始まります(笑)。「かぜのうた」の全般的な書き方は霧舎巧の影響が濃いです。
第2章…アイリスの話の出典は、アガサ・クリスティの短編「黄色いアイリス」。パーティーの席上で起こる事件なのです。
第3章…「古代種?」って、我ながら分かりにくいよなぁ…。FF7に古代種の神殿というところがあります。その中には「古代種」と呼ばれる人たちの思念が残っています(人間としては死んでいますが、その意識だけが人のような姿をしてとどまっています)。彼に話しかけると休憩や買い物ができるのですが、その時彼は「ねむねむ…」と言うのです。以上、ものっすごいコアなネタ(笑)。
第4章…校内に伝わる伝説、だなんて完全に「霧舎学園」(霧舎巧の本格推理小説シリーズ。講談社ノベルス)の影響だ(笑)。美寛が埃だらけの時計塔を「床や壁も真っ黒じゃないし」と言っているのは、綾辻行人の「暗黒館の殺人」を受けています。
第5章…「大貴くんのお父さん」っていうのは、深駆がおそらく一番影響を受けた漫画、「怪盗セイント・テール」から。でも名前が「大貴」で合ってたか自信ない…(苦笑)。あ、ちなみに彩芽の「芽」の字は、このマンガの主人公、羽岡芽美ちゃんから。…なんか、このあたりの美寛と疾風の会話は若干「のだめカンタービレ」に影響されてるなぁ(笑)。あ、小沢木先生のところで美寛が言ってるのは、深駆が彼女の名前を「霧舎学園」の登場人物から1文字ずつとった、ってことで…具体的には順に、小日向棚彦・成沢冬美・頭木保・羽月琴葉・坂下のの子…この5人からとったっていう事です。その直後のスモーク云々は「4月は霧の00(ラブラブ)密室」のシーンから。…で、次が「聖真女学園」と「純徳女学園」ですね。前者は綾辻行人の「緋色の囁き」の舞台。後者は霧舎巧の「開かずの扉」シリーズに出てくる女子高。ともに名家のお嬢様学校です。最後にP・D・ジェイムズは女探偵コーデリア・グレイが活躍する「女には向かない職業」や「皮膚の下の頭蓋骨」の作者。
第6章…「なっち」と「ふゆん」は矢野龍王の「箱の中の天国と地獄」の登場人物、真夏と真冬の姉妹のこと。それから「ガーネットとエーコ」は共にFF9の登場人物。ガーネットはアレクサンドリアというお城のお姫様で、エーコはマダイン・サリという村に住む少女。ガーネットは16歳、エーコは6歳。そりゃあ美寛も怒るよ(苦笑)。第5章で出たとおり、「琴葉ちゃん」は霧舎学園の主人公、羽月琴葉。その母親は羽月倫子といって、虹川警察署の署長さん。娘に情報をリークしまくり(笑)。ドルリィ・レーンは「Xの悲劇」や「Yの悲劇」における探偵役。元舞台俳優で耳が悪いために読唇術を使う探偵で、変装などもこなします。特にシェークスピアに対する造詣が深く、よく色々な場面が引用されます。ちなみに「Zの悲劇」と「ドルリィ・レーン最後の事件」に登場するドルリィ・レーンの相棒がサム警視の娘、ペイシェンス(Patience)。美寛が自分の「寛」の字を指して言っていたのは彼女のことです。吉祥院慶彦は貫井徳郎の作品に登場する名探偵。容姿端麗な推理小説作家で、大学時代の後輩で刑事の桂川から非公式に情報を得て、独自の推理を展開します。二階堂蘭子はもちろん、二階堂黎人の作品における名探偵。「吸血の家」の一場面で、ある有名な推理小説を「死体の第一発見者を疑う原則にのっとればすぐに事件解決できた」と言うのです…。ちなみに、この「ある有名な推理小説」は内緒。
第7章…「チョコレートでいいですか、メイベル?」も分かりにくいなぁ。NHKで放送されていたアニメ「名探偵ポワロとマープル」に出てきた、エルキュール・ポワロの助手であり、ジェーン・マープルを大叔母に持つ(つまりレイモンド・ウェストの娘)女の子がメイベルなの。チョコレート(ココア)や薬湯(ティザン)はポワロが好んで飲んでいます。「おじさまが遭遇した光高校での事件」とは拙作「最後の場所」のこと。現在はあまりに出来が悪いため封印中(苦笑)。最初の被害者、星窓育香の死体は頭部と四肢を切断されて、「胴体」と「頭部+四肢」が2つの骨格標本にそれぞれ磔に…ってどれだけお前はグロいシーンを演出したんだ(苦笑)。しかもこれが深駆の初めて書いた推理小説なの…。エグいにもほどがある(苦笑)。「するとあんたが、その『ネメシス(復讐の女神)』ということかね?」というセリフはアガサ・クリスティ「カリブ海の秘密」からの引用です。あ、あと「1DKのマンションで…」って言うセリフもそっくりそのまま引用文。出典は綾辻行人の「十角館の殺人」。冒頭でエラリィが語るこのセリフは、かなりの「新本格派」の意見を代弁しています。深駆の意見も基本的にはそう(ちょっと違うけど)。
第8章…「これで屋上が8の字型だったら」は我孫子武丸の「8の殺人」から。
第9章…ジョン・ディクスン・カーの短編「幽霊射手」と我孫子武丸の「8の殺人」の話はともにボーガンが関わる殺人事件。でも前者は室内で起こるし、後者はもっと状況が精緻なので…。ホントはもう1つある、っていうのは内緒の話。
第10章…ここもミステリ的な解説はないです。…う〜ん、ちょっと彩芽ちゃんの性格がエグすぎかも…(苦笑)。普通ここまでやられたら絶交だよねぇ…。あ、話はまるで変わるけど、美寛ちゃんには「ちょっぴり」って言葉を多用する癖があります。これは「ちょっぴり」意識してやったの。普段の深駆はあんまし使わないけど(笑)。
第11章…「白い僧院の殺人」はカーター・ディクスンの著作。美寛ちゃんが第9章で、「雪に囲まれた離れ」という準密室のパターンを紹介してるけど、その古典的名作がこれです。なお、直後の「雪密室」は法月綸太郎の著作で、この中に「白い僧院の殺人」のネタをバラしている章があります。だから、「雪密室」をこれから読まれる方は先に「白い僧院の殺人」をお読みください。
第12章…美寛が思った2人の回文名の登場人物、とは5章の解説でちょっと出てきた「霧舎学園」シリーズの小日向棚彦と、有栖川有栖の「孤島パズル」「双頭の悪魔」に出てくる有馬マリアのことです。他にもいるとは思いますが、少なくとも深駆はこの二人しか知らないので…(苦笑)。鎖井敏瑠の父親へのコンプレックスは、FF10の主人公、ティーダを少し意識した。
第13章…途中で出てくる「2時間ミステリー」の話は深駆の戯言です…。2時間ミステリードラマファンの皆様には本当にごめんなさい。「聖アウスラ修道院」については二階堂黎人の「聖アウスラ修道院の惨劇」を参照してください。
第14章…ここは特にないですね。非常階段の話はあとから「そこに飛び降りたら逃げられる」事に気がついて慌てて挿入。あ、市立図書館の小口さんの由来は、本の部分の名称からきています。本を水平に置いた時、三方にページの側面の、紙の部分が見えるじゃないですか?あれを「小口」っていうの。
第15章…第13章の図にごくごくさりげなく描いてある時計塔の窓をのぞいて、唯一時計塔に北向きの窓があることを示す推理の上では見逃せない章なんだけど…。さて、ここがいわゆる「深駆モード」。深駆の推理小説が推理小説でなくなる最大のポイントです(爆)。まあ前作よりはマシか(注、前作「Blue Deep-sea Forever」では、龍牙と龍牙の妹がラブラブモード全開で…。二人のキスシーンがあったりして我ながらビックリ)。でもねぇ、ホント疾風の一番大切なあのシーンの次の行に、思わず一言「あま〜い!」って書きたくなった(爆笑)。でも、その次の段落のこの一文には気付かれました?「疾風の言葉が、私の体の中を『深』いところまで『駆』け抜けていく」。こんなところで、「深駆」はこのドラマの虚構性を物語っている…なんて言うと言い過ぎかなあ?ちなみに後半に出てくるあのプリクラの話は第7章にも…。
第16章…「月を見るなら午前1時がいいんだよ」って文章は、霧舎巧の短編「月の光の輝く夜に」から。「日焼けすると肌は黒くなるけど、月焼けすると肌は白くなるんだよ」ってセリフの元は、有栖川有栖の「月光ゲーム」に書かれています。携帯電話の発信源の話は、霧舎巧の「ドッペルゲンガー宮」や「マリオネット園」に詳細な記述があります。「中也」、美鳥、美魚、清はいずれも綾辻行人「暗黒館の殺人」の登場人物。
第17章…「僧正殺人事件」のファイロ・ヴァンスのような事や「Yの悲劇」のドルリィ・レーンのような事、とは何か、なんてことはここでは言いません。有名な作品だからご一読ください…。ブラウン神父はG・K・チェスタートンの短編推理小説に登場する名探偵。犀川創平は森博嗣の「すべてがFになる」に登場する大学教授。彼の「現実」に対するセリフを以下に引用(一部略)。『「(犀川)先生…現実って何でしょう?」「現実とは何かと考える瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だ…普段はそんなものは存在しない」』
第18章…嵐の前の静けさ、です。自分で最初に書いてて心臓がドキドキした。
第19章…いきなりドライランドの巨人なんて言葉が出てきます…。これはRomancing Sa GaというRPGに出てくる巨人族のことです。彼らの隠れ里はドライランド地方にあるのです。
第20章…え〜、納得いかない方が多いと思いますが、深駆はこれでいいと思っています。深駆は人を罰せられるほど出来た人間じゃないですし…。ちなみに「だれかの命を傷つけるという事は、自分のこころを傷つけるのと同じことだから」という言葉は、聖剣伝説4というRPGのリチアのセリフ。あ、2人が似ていたという話は第10章の中にあります。
第21章…1月21日には「深駆の誕生日」って意味もこもっています(コラ)。美寛が「これとパターンが似ていた3つの事件」なんて言っていますが、J・D・カーとアガサ・クリスティ、それから青山剛昌のアレです…とウチにはそれ以上言えないぞ。探せばもっといっぱいあるでしょう。あ、「ラピス」は拙作「Brilliant Number “444”」の中で龍牙たちが演じる、いわゆる「劇中劇」。あれは推理する要素がほとんどないのに400字詰め原稿用紙で175枚相当もあるという、かなりバカな作品でしたね…(苦笑)。疾風がこの章でしているゲームはFF10−2です。ヴェグナガン(これが「蛾のような大きな敵」)を倒したあとユウナがレンの格好でシューインと会話するシーン。「かぜのうた」で言うならユウナが美寛、レンが風花、シューインが「犯人」ね。で、シューインは目の前にいるのがレンでなくユウナだと分かってこちらに襲い掛かってくる。2行の引用文はそれぞれ戦闘開始直後のリュックとパインのセリフ。最後に、美寛がそこで「ラジオ番組を舞台にした短編」と言っていますが、これは一応、恩田陸の短編「あなたと夜と音楽と」です。…もっとも、厳密に似たシーンだとは全く言えませんが。


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