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しきのうた

アンコール


「では、読者の皆さん、わたしたちと一緒に、まっ赤な夢を見ましょう!」
はやみねかおる『魔女の隠れ里』より

まずは皆様、深駆の新作「しきのうた」をお読みいただいて、どうもありがとうございます♪…皆様、ちゃんと<深駆のお願い>通りに、第1楽章から聴いていらっしゃいますよね?それを前提にして、ここから話していきたいと思います。聴いていない方はゼヒ、順番に聴いてくださいね。
…さて、短編集「しきのうた」は、深駆の中では「みくのうた」のトリックのためだけに書かれた短編集なの。前に並んでいる短編たちは、「みくのうた」のトリックを成立させるためのカモフラージュです。もう他の小説自体がミスリード、といってもいいくらい。…やっぱりこういうトリックは、思いついたら即ハデに実行、ということで。そのため書いた順番は「みくのうた」が最初。だいたい書き始めたときに「はやのうた」と「ひろのうた」は何も決まっていなかったんだから…(苦笑)。「りあのうた」は、主要パズルだけは作っていたけど…生物の授業中に(爆)。あと、深駆の中では「○○のうた」というタイトルにこだわるべきかどうか、っていうのは少し悩んだの。でも今までずっと2文字だし、踏襲できる限りはしようか、ということで疾風・美寛・璃衣愛の名前は無理やり2文字に縮めました。ちょっと不本意だけどしょうがない。気分は肉斬骨断(?)。ではそれぞれの「うた」の話を個別に。あ、作者名敬称略深謝。またいつも通りFFはゲーム「Final Fantasy」シリーズのことです。
「しきのうた」→完全に法月綸太郎の『二の悲劇』に感化されています。この作品は本当にすごい。社会派っぽく思えてしまうストーリーもロジックもトリックも、全てが巧妙に書かれていて、もうこれは感動的ですよ。『死刑囚パズル』『都市伝説パズル』の2作と共に、深駆の中では今のところ法月3大傑作、でしょうね。…そしてこのお話では部分的に二人称による語りが展開されています。そこをちょっと取り入れてみました。何だか不思議な視点で、個人的にはお気に入り。あ、「はやのうた」や「ひろのうた」に少し書いてある「ルナティック殺人事件」は拙作「つきのうた」のことです。
「はやのうた」→最初は「あいのうた」のようなことを考えていたんだけど、結局ネタが思い浮かばず。次に思いついたのは深駆が以前挫折した「男女の別がない推理パズル」なの。マコトさんとかジュンさんとかユウさんが登場する推理パズルで、「ジュンは25歳だが男か女か分からない」とかいう感じの、とんでもないヒントをつけようとしていたの。でもこれはニコリの「みんなのブログ」のブログ小説のネタに「きえのうた」として使ってしまったので放棄。そこで思いついたのがチャットなの。まず何も考えずに最初の章を書いて、そこから少しずつ練り上げています。「つきのうた」とリンクさせようと考えたのはその時。こういう無計画な発想をするから、「つきのうた」にネタを仕込めないんだよね…(苦笑)。あまり脈絡なく最初に持ってきている霧舎巧の引用文は、実はそういう羨望と共に引用しています(笑)。彼の世界観の広がりとそのリンクは、本当にすごいので…。あ、あと実はちょっぴり深駆の体験談もあるの。友人に相談した時、最後に慰められて、しんみり「ありがとう…」って言ったら、「ま、このセリフは某18禁ゲームのセリフだからね」って言われて(爆)。雰囲気ぶち壊し(苦笑)。あ、あのセリフはFF12のパンネロのもので、「つきのうた」でも使いました。
「ひろのうた」→もうとにかく「エレベーターにまつわるトリック」を思いつくのが大変でした。実はニコリのパズル作家新年会に参加したときに、「天歩」さんと「まいなすよん」さんから「深駆さん、例えばエレベーターを舞台にした事件なんてどうですか?」と言われてしまい。今となってはどうしてこんな流れになってしまったのか不明なのですが(苦笑)、とにかくそれを受けて考え出したのがこのお話です。これが一番ネタに苦労したの。ホント「みくのうた」を書き終えてから数ヶ月トリックが思い浮かばなくて。最初は下部に死体を隠すとか、2基の展望エレベーターで反対側から射殺するとか考えていたんだけど全く形にならず。契機になったのは、今深駆が通っている専門学校の先生の体験談。先生はどこかのデパートで白装束の女の人がエレベーターに乗っているのを目撃したらしいの。でも扉が閉まって、移動せずに再び開いた時には誰も乗っていなかったという…。聞いた瞬間に「これだ〜!!」と思いました(苦笑)。それで話の筋を考えてからはわずか2時間で書き上げてしまったという…(笑)。あ、「これから毎月事件に遭遇する」云々は霧舎巧の「霧舎学園」シリーズを受けています。あと「クロック城」「アリス・ミラー城」は北山猛邦の小説の舞台です。北山猛邦は現代ではおそらく最高の、物理トリック(機械トリック)の名手であります。あと隆臣の部下の宇治原さんは、拙作「やみのうた」にも出てくる彼です。
「りあのうた」→ストーリー自体は比較的すんなり思いついたのですが、「そもそも川渡りパズルを考えないといけない」「そのパズルを実玖に解かせてはいけない」「川を渡る必然性を持たせなければならない」「泳ぎの得意な夏一に川を泳いで渡らせてはいけない」など、なかなかハードルもありまして。それを色々と非現実的な設定を混ぜながら構成していったわけですね。実はこれが一番書くのに苦しんだかも。パズル自体はそんなに難しくないと思います。各人がボートを漕げる回数が決まっていることが、逆に選択肢を少なくしてくれるのですよ。正解の一例は以下のとおり。あ、あと実玖の話の解説ね。バッツはFF5の主人公。幼少時にかくれんぼで屋根の上へ上がったものの下りられなくなったことがあって、それ以来高所恐怖症なの。Bパークは深駆の中では松山市にある梅津寺パーク(あ、深駆の設定では実玖や璃衣愛が住んでいる星降村は愛媛県の東端にあります)。「ばいしんじ」と読みます。なおこのくだりは完全にフィクションです。梅津寺パークのジェットコースターでそんな事故は起きていないことは強く断っておきます。余談ですが、深駆は子供の頃に梅津寺パークの飛行機が上空に上がって周遊する乗り物を、あまりに泣き叫んだ結果、係員の人に止めてもらったことがあります…(爆)。それはさておき、「忠吉さん」はマンガ「あずまんが大王」で、ちよちゃんが飼っている犬の名前。ポイゾナスボートバイターとキングオブキングスオブネブラは共に、FF12のミニゲーム「ネブラ河の釣り」で釣れる魚の種類。ボーカロイドはもちろん初音ミクのこと。深駆の設定では、実玖が歌っているのは「1000の言葉」です。FF10−2の挿入歌で、ユウナがレンの気持ちを思って(実際には歌姫のドレスフィアに残るレンの意思とかも絡むんだけど話が面倒なので省略)歌う曲なの。これを歌うのが雷平原という、雷雨がほぼ絶え間なく降っている場所なので、実玖は雷が鳴ったらもっといいシチュエーションなのに、って言ったわけ。「ナントカはカゼ引かないし」は同じくFF10−2のシンラがリュックに言ったとされる言葉。
○正解の一例(行きは先に書いてある人がボートを漕ぎます。矢印の後ろに書いてある人が戻ります)
1恵介と璃衣愛→恵介(あらかじめテントの1つをしまっておく)
2恋奈とブラン→璃衣愛
3恵介と夏一→恵介
4恵介とテント→夏一(ここで運んだテントを張る)
5璃衣愛と実玖→恵介(ここで実玖がいたテントをしまう)
6夏一と由衣美→夏一
7夏一とテント→夏一
8夏一と恵介
「みくのうた」→今回の短編集で最大の山場。見せ場はもちろん、叙述トリックです。これを成功させるために、あらゆるところで布石を打っていたのですね。その前に主要メンバーを主人公にした各小説が並んでいること自体が「ああ、今回はこの4人が1編ずつ主人公なんだなぁ」と思わせるトリック(笑)。実玖が8月にAを訪れていたこと(拙作「ときのうた」ですが)は「しきのうた」(第一楽章)で少しだけ触れているといった、邪道な布石の打ち方もしています(苦笑)。「ほしのうた」に書いた実玖の誕生日とかの話は、読者の方は忘れていると思ったので「りあのうた」に無理やり入れました。章を跨いだ伏線という意味では、これも邪道だなぁ(苦笑)。最初は本当に事件を起こそうかと思ったけど、うまく着地させられないような気がしたので、最初から「犯人は誰だ」的なゲームに埋没させてしまいました。あ、そうそう、深駆は一応「ぴぃくん」の本名について、条件を満たす1つの意見を持っているのです。でもこれはナイショ。天放さんが披露する推理の元は古畑任三郎です。にしても、深駆のペルソナである実玖が事件を解決したんじゃ…って。申し訳ないというか恐れ多いというか、そんな気がします。トリックを明かすためにはそうする方法しか見つからなくて…ご了承を。
最後になりましたが改めて。「天歩」さん、「まいなすよん」さん、いつも深駆の拙い小説を読んでいただいて、どうもありがとうございます。今回の短編集は…特に「ひろのうた」と「みくのうた」は…個人的にはお二人に捧げるものです。どうぞ楽しんで読んでください。もちろん、この小説を読んでくださった全ての皆様に感謝感謝です。皆様が、赤に似て微妙に非なる「シンクの夢」を楽しんでいただければ、深駆は幸せです。本当に、どうもありがとうございました♪
Dreamily Yours 深駆

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