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ときのうた

Day 1 〜トランク・パニック〜


「実はこの男は、謎とかクイズとかミステリという言葉に尋常ではない反応を示す、変態人間なんだ。」
高田崇史『試験に出るパズル』より

…たとえば、平安時代の女流作家として有名な清少納言は、主著「枕草子」のいわゆる類聚章段の中で、このようなことを書いているの。勝手に現代語訳しちゃうけど、「めったに手に入らないもの。それは、眉毛を抜くための銀の毛抜きである」って。私たちから見たら、平安時代の女の人ってさ、正直あんまりキレイには見えないじゃない?絵巻物に描かれる女性は、基本的に平板な顔つきだし…。この前テレビに出た、あの世界三大美人の小野小町を描いた掛け軸だって…ホント、ただのおばあさんだったんだから。いや、確かに若い時はきれいだったかもしれないけどさ?とにかく、そんなあんまりキレイじゃない(多分)人たちだって、ちゃんと眉毛の処理とか、身だしなみには気を使っているわけよ。こういう例は他にもいっぱいあるの。パッと名前は出てこないけどさ、ドラキュラの女版みたいなやつとか、あれは自分の美を保つために女性や子供の生血を必要としていたわけでしょう?それに例えば近世のフランスとかも考えてみて。あんな苦しいだけのコルセットを、見栄えを良くするためだけにしているのよ。中国の纏足だって、今の私たちから見れば奇怪にしか見えないけど、当時は重要なおしゃれだったわけで、そのためには何年も何年も、足をきつく縛っておかなくちゃいけないわけ。それからほら、今でも首を何個ものリングで長くしている民族もいるでしょ?おしゃれには、すっごく時間と労力がいるのよ。ましてカワイイ子はなおさら、ね。
それは現代でも変わらないの。例えば、小鳥遊練無くんだって言ってるでしょ?「服を着るのにはそんなに時間はかからないけど、大事なのはどの服を、どの組み合わせで着るかってことだよね」って。彼の何枚もペティコートとか着込んでいる姿は、もちろん想像の世界だけど、すっごくカワイイんだから!

「あのさ…美寛」
私がそうまくし立てる横で、疾風がため息をつく。
「そういうのは分かったよ。すべすべオイルをちょっとずつ使うモリシアみたいなもんだろ?でも、美寛が遅刻したって事実は変わらないの」
「ぷぅ〜!!」
私は頬を膨らませる。いや、それは確かに、1時間くらい遅刻はしたけどさ…。
「疾風には分からないんだよ、女の子の苦労が!…疾風はいいよね、いっつも饗庭慎之介みたいな服装でどこでも行けるんだから!疾風、絶対髪を伸ばしたり下駄を履いたりしちゃダメよ!」
疾風はわけも分からずに、自分の服を見る。今日は黒のシャツに黒に近い色のジーンズ。…もう、疾風はそんなに真夏の太陽の光を吸収したいの?髪はサラサラでちょっぴり長いくらい。前髪はかなり長め。もちろん疾風は、饗庭さんとは服装を比較しただけで、顔なら絶対、千葉千波君に近い。
「美寛の例え、分からないんだけど…」
そりゃ、分からないと思って言ってるもん。
「俺自身は…本でも持っていたら、ゼクシオンかな。そういうイメージなんだけど」
疾風は右手を広げて、カッコつけた仕草をする。そういうゲームネタこそ、私には分からないんだってば!もう、なんで高校3年生にもなってそういう事言うかなぁ?冒頭の私みたいに、受験生らしいたとえをしなさいよ!…もちろん、一段落後に推理小説の登場人物の話をしてる時点で、私もちょっぴり不真面目だけどさぁ…。
「ところで美寛…」
疾風は私のほうを見ずに言う。さっきから疾風は、私のことをあまり見てくれない。
「…どうして、そんな服着てきたわけ…?エストのつもり?」
私は自分の服を見る。フリルの付いた白のブラウスに、水色のちょっぴり短いチェックのスカート。頭はツインテールで、リボンをつけている。…う〜ん、どこかのパン屋さんにいそうな格好かも。
「う〜ん、私のイメージ的には…昨夜子ちゃんかな。倉崎昨夜子」
「…分かった、もう聞かない」
「えへへ…見とれてるでしょ?」
私は無理やり疾風の顔を覗き込む。
「もう、美寛…今日は実玖と璃衣愛を迎えにいくだけなんだからな?」
疾風の顔は真っ赤。…あ〜、やっぱり照れてる〜!私は疾風の耳元に、殺し文句を囁く。
「分かってるよ〜、お・に・い・ちゃん?」
その言葉で疾風は悶死したみたいだった。

さて、電車で空港に行くまでの間に、自己紹介。私の名前は雪川美寛、18歳。高校3年生。今日はこれから、5月に行われた交換留学で知り合ったE県在住の2人の高校生…霞賀実玖と結川璃衣愛を、空港まで迎えにいくの。ま、彼らのことは後で紹介するとして…私の身長は154センチで、色白、二重、かわいい顔つきの揃った、自分ではかなりいい女の子だと思うんだ〜。性格も、好きな人にはとことん尽くすタイプだし。…え、私の欠点?ん〜、私よりももっと完璧な、雅っていうお姉ちゃんがいることくらいかな…でもそれ以外は、欠点なんてないよ〜。
「とりあえず料理が…………と、あと好奇心が旺盛すぎ。それから怒るとすぐ手が出るし…」
私は疾風のほっぺをつねる。ふんだ、今ちゃんとお料理は、疾風のために頑張ってるんだから!…えっ、受験勉強はしなくていいのか、って?もう、ヒドイこと言うなぁ!い〜い、人間の集中力が持つ時間は、一般的に50分が限界なの。つまり、そう何時間も何時間も勉強なんて出来ないの。それに、7月末からあの「夜闇館の殺人」に巻き込まれて、私も疾風も散々だったんだから!!今は、そこで失われた英気を養ってるの!…え、何、今日は8月22日だ、って?もう、君もヒドイなぁ!まだ平気だよ、後期補習は27日からなんだし、ちゃんと宿題は終わったし…。
「…美寛の数学、俺のノートを写しただけじゃ…」
私は疾風のほっぺをもう一度つねる。さて、この子の紹介をしなくちゃ…。今私にほっぺをつねられているこの子は、月倉疾風。私の幼なじみで、恋人でもあるの。身長は170センチ(という事にしておいてあげる)、髪はサラサラで整った顔立ちの、かっこいい男の子。ちょっぴりミステリアスで陰気?なところもあるけど…でも、少なくとも私だけは疾風の「そういう部分」も分かってあげているつもりでいるの…。私は、疾風のそういうところを分かっているからこそ、彼のことをずっとずっと支えてあげたい。それに、私が疾風に頼り切っているところもいっぱいあるしね。
「数学とかでしょ?」
私はそう言う疾風のほっぺを本気でつねる。もうっ!!…でも、そうやって何でも言える仲だから、私は疾風といると、本当に安心できるし、これからもずっと一緒にいたいって、大好きって…そう思うんだ…。

さて、私たちはH空港に着いた。到着ロビーに行くと、どうやらM空港からの飛行機…つまり、実玖と璃衣愛が乗っている飛行機は、エンジントラブルのため1時間ほど遅れて着くらしい。あ、実玖と璃衣愛はE県の東の端にある、星降村という村で暮らしているの。それにしても、よかった…私の遅刻でロスした時間が、思わぬところで埋め合わされた。やっぱり、普段いいことしてると、こういう時に神様が助けてくれるよね…。
「美寛…実玖たちの飛行機に、何か呪いをかけなかった?シャナクでも使えればよかった」
私は疾風を睨む。もうっ、今日はいつに無くつっかかるじゃない!
「疾風〜、私を怒らせたいわけ?」
「怒ってる美寛も、かわいくて好きだよ」
疾風は笑顔を見せて言う。…うう、ダメ…私、疾風の笑顔を見ると、必ず戦意喪失しちゃうの…。私たちはそんな会話を続けながら、しばらく待っていた。
「…あっ、美寛さん、疾風さん!」
私たちはその声に右を向く。…だいたい私たちを、下の名前に「さん」付けで呼ぶ人は、1人しかいない。
「実玖!璃衣愛!」
実玖と璃衣愛は並んで歩いてきた。実玖は茶色い帽子に深緑のジャケットに紺色のTシャツ、黒の綿パン姿で左手に灰色の大きなバッグを持っていた。…長袖姿がすっごく暑苦しいんですけど。一方璃衣愛は、白いシャツとキャミソールを合わせて着ていて、下は短めのジーンズ。綺麗な小麦色の肌が際立つ。璃衣愛は背も高くて(160センチくらい)スタイルがいい。実玖の背が私とあまり変わらないくらいなので、璃衣愛のほうが実玖よりちょっぴり高いわけ。傍から見ると、勝気なお姉ちゃんと引っ込み思案な弟、みたいな感じだった。特に実玖は童顔で、中学生に見えなくも無いくらいだし…。
「疾風くん、久しぶりっ!!」
璃衣愛は迷わず疾風に飛びつく。…この子、天邪鬼だからなぁ。その事は前回の交換留学の件で分かっているはずだけど、やっぱり心に刺さるものがある。
「ちょっと、璃衣愛ちゃん…いきなりそれは無いでしょう…。タロット山荘の速水玲香みたいですよ…」
今回はちゃんと実玖が注意してくれる。一方の疾風はくっつく璃衣愛を引き離す。本当に恭助と美絵留みたい…。私は疾風が引き離しにかかるのを確認してから、実玖に言葉を向けた。
「相変わらずそうね、2人とも」
「ええ、そうですね。…お2人も、お元気そうで何よりです」
実玖は右手を左、右と大仰に動かしてから、胸の辺りに持ってきて、深々とおじぎをする。…誰の仕草だろう?あ、実玖は私のコアな推理小説ネタと、疾風のコアなゲームネタの両方についてこれる数少ない人なの。ある意味希少種というか、珍種だよ。きっと今のはゲームネタね。きっと璃衣愛が、普通の人からすれば一番常識的というか、普通だと思う…。う〜ん、この場合の「普通」は、「オタク的じゃない」みたいな感じかな。実玖は言葉を続ける。
「えっと…じゃあ、いきましょうか。モノレールですか?」
「ううん…K鉄道を使ってK駅でK方面の電車に乗り換えたほうが近いよ」
ああ、Kばっかりで分かりにくいよね。でも本当のことなのでしょうがないの。
「分かりました、じゃあ行きましょう…って、あれ?璃衣愛ちゃん、荷物は?」
疾風から強引に引き離された璃衣愛が辺りを見回す。その顔は、お母さんにイタズラをたしなめられた時の女の子のようだった。
「あ…あれ?おかしいな、持ってきたのに…。美寛、隠したでしょ〜!?」
「そんな子供みたいなことしないよ」
璃衣愛の目は笑っているから、きっと冗談だ…とは思うけど。私は辺りを見回す。
「だいたいどんなカバンなの?」
「ん?普通のキャスターバッグ」
璃衣愛の言葉に、実玖からちょっぴり低い声でツッコミが入る。ちなみに実玖は地声が割と高くて、女の子みたいなの。顔立ちもちょっぴり女っぽいしね。
「璃衣愛ちゃん…あれは、トランクって言ったほうがよくないですか…?」
「え!?璃衣愛、トランク持ってきたの!?」
璃衣愛は意外にも、しおらしい態度を見せる。強調しておくけど、璃衣愛のベースはこっちなんだから。
「だ…だって、色々と女の子には準備が要るもん…ね、美寛は分かるでしょ?」
「まあ、うん…そうだね。で?そのトランクの特徴は?何色の…」
その時、私の横をいきなり赤いトランクが通り過ぎていった。
「僕は風だぞ〜!びゅびゅ〜ん!!」
え…?私たち4人は固まる。私たちの視界に捉えられていたのは、小さな男の子だった。きっと5歳くらい…かな?その子が、トランクに掴まって助走をつけて、まるでチョロQのように走り去っていった。疾風から思わず「お前はリオンか…?」という呟きが漏れるけど、今は無視して私は璃衣愛に聞いた。
「い…今のトランクじゃないよ、ね?」
「うん…私の、水色だから…って、ええっ!!?」
璃衣愛が驚きの声を上げる。私たちもその方向を見た。
「…なっ!!?」
そこには、何人もの男の子たちが、先ほど赤いトランクで走り去っていった男の子と同じ真似をしていた。彼らはみんな、同じ方向に走り去っていく。
「追ってみましょう!」
すぐ声を上げたのは実玖だった。
「きっと…璃衣愛ちゃんのトランクも、直前に同じ事をされたんですよ!あの子達が向かう先に、トランクがいっぱい集められているんじゃないですか!?」
「ああ、だろうな…よし、追いかけるよ」
疾風の号令が合図になって、私も璃衣愛もやっと気を取り直す。私たちは走って、子供たちの後を追っていった。私たちが行き着いたところは、空港内の託児所だった。とはいっても、これはきっと空港で働く女性のための施設ね。まさか、これから旅行に行くときに子供を空港に預ける親なんていないし…。そこでは、先ほどの男の子たちが保母さんらしき服の人に叱られていた。一段落したところで、璃衣愛が声をかける。
「すみません、私のトランク、無いですか?水色のやつなんですけど」
「ああ、本当に申し訳ありません…子供たちが一斉に飛び出して、お客様方のトランクで遊びだしたみたいで…本当に申し訳ありませんでした」
そして保母さんは、私たちを奥に案内してくれる。子供たちは別の部屋に入ったようだ。
「トランクは、ここに子供たちが置いていきました。これで全部のはずですけど…?」
璃衣愛はちょっぴり眺める。そして、すぐに言った。
「あっ、その真ん中のがそうです!」
「ああ、分かりました。では今取り出しますね…」
そう言って、保母さんはトランクを上に持ち上げようとした。その時…。
「えっ?」
トランクがほとんど持ち上がらない。トランクの下には、おもちゃの鉄道を走らせるレールが敷かれていた。どうやら、それにはめ込まれているらしい。きっちりとはまったトランクの車輪は、スライドこそすれ、上には持ち上がりそうに無かった。
「え、ちょっと…取れないんですか!?」
璃衣愛の声がちょっぴり大きくなる。
「そ、そうみたいです…あの、少々お待ちになってください」
そうして保母さんはどこかへ行ってしまった。後に取り残された私たちは、その状況をよく観察する。どうやら他の人のトランクも、すべてこのレールにはめ込まれているらしい。レールはタテヨコに格子状に走っていた。この状況を図示すると、こんな感じになる。図ではちょっぴり、トランクの位置が中心からずれているかも知れないけど、マスの中心にあるものだと思ってね。

スライドパズル出題

「つ、つまりこれは…どういう事?」
璃衣愛が私たちのほうを向いて聞いてくる。その言葉にすぐに反応したのは、やっぱりというか、実玖だった。
「ん〜、つまりこれは、15パズル…1から15のプレートをスライドさせて元の位置に戻すパズルですけど…に代表される、スライドパズルの亜種ですよね。タテヨコ格子状のレールにはまっている、っていう事は…縦向きのトランクは縦方向にしか、横向きのトランクは横方向にしか移動できない。その状況で、璃衣愛ちゃんのトランクだけ取り出せばいいんですよ。他の人のトランクは取り出せないけど、それはこの際無視しちゃいましょう」
「えっと…だから、具体的にどうすればいいのよ?」
「ま、最終的にはCとDのトランクをずらして、出口を塞がないようにすればいいんですよ。ほら、一箇所だけ枠が外れているところ(図の太線が切れている部分)があるでしょう?璃衣愛ちゃんのトランクなら、位置的にあそこから出せると思うんですよね。とりあえず…考えてみませんか?」
璃衣愛はすぐに諦めたらしい。
「私はパス。…だいたいあの子たち、何でこんなにいっぱいのトランクを、わざわざおもちゃの鉄道のレールにはめ込んだりするのよ!そもそも、こんな事できる時間あった〜!?」
「そういう前提条件には、文句をつけないほうがいいですよ。川渡りパズルとか、そんな事をするくらいなら泳いだ方が速い、なんて言ってたらパズルになりませんから」
私もこういうパズルは嫌いじゃないので、実玖と一緒に考えることにした。とりあえず、最初に動くのはABDEHの5つのトランクなんだから…。璃衣愛は実玖の手元を見ながら話す。
「でも、いっつも思うんだけどさ…。実玖はこういうの、よく考える気になるよね〜」
「ま、これは好き嫌いありますからね…無理に他人に薦める気はないですね」
「私は頭を使わないのがいいな。例えば『日本では自動車は、何で道路の左側を走るでしょう?』とか」
「…え?それは、道路交通法で決まっているからじゃないですか?」
私も実玖の意見に賛成。…だけど、1人ちょっぴり遠くにいた疾風から、思わぬ言葉が飛んできた。
「実玖、美寛…。たぶん、句読点含めて5文字以内で答えられるよ」
「えっ!?」
私と実玖の言葉が揃う。疾風はちょっぴり息を吐いた。
「あのさ…そういう真面目な答えを求めてる問題じゃないと思う」
「疾風くん、答えをどうぞ〜」
璃衣愛がちょっぴり大げさに、疾風に言った。疾風はそれに答える。
「『タイヤで。』とか」
「正解!」
私と実玖は脱力する。ひっど〜い!!
「…ちょっと、璃衣愛ちゃん…」
「だから〜、私はそういう問題の方が面倒じゃなくていいと思うんだけど、って言ったでしょ?」
「分かりました、気をつけておきます…。それより、できましたよ」
「…えっ?もう出来たの、実玖!?」
私は実玖の手元を覗き込んだ。何か訳の分からない記号が書いてある。
「あ、この記号はつまり、どのトランクをどっち方向にどれだけ動かせばいい、っていう事ですね。…う〜んと、とりあえず14手で外せそうですね。はじめましょうか?」
実玖はトランクたちのところへ向かう。と、そこで疾風が口を開いた。
「たださ…実玖?」
「え?何ですか?」
「悪いけど、もっと簡単な方法があると思うな」
「えっ?」
その言葉に実玖だけでなく、私も璃衣愛もポカンとしてしまう。
「だからさ…これ、おもちゃのレールなんだろ?」
疾風はそう言って、レールの部分に近づいた。そして、そのあたりを手でいじる。
「俺がこういうので遊んでいたのは…もうずっと前のことだけど…そのときから、だいたいおもちゃのレールなんて本格的じゃないものは、単なるジョイントだと思うんだ。だから…」
疾風はレールを持ち上げて、一方のレールを上に押し、もう一方のレールを下に引いた。すると…。
ガチャッ。
「…ほら、外れるでしょ?そんなパズルを解かなくても、璃衣愛のトランクが乗っているレール部分だけ、両側を外して引き抜けば終わる。さっき保母さんが持ち上げた時に外れなかったのは、持ち上げた場所がちょうど、ジョイント部分の下側だったからさ。それにあの人、ほとんど持ち上げなかったし」
私は脱力してしまう。まあ、それ以上に実玖のほうが脱力したと思うけど…。
「え〜っ…そういうの…」
「実玖…シュミ族の石集め終了後みたいになってるけど…大丈夫か?」
「ほら、実玖!そんなことで気を落とさないの!…色々考えてくれて、ありがと」
璃衣愛の似合わない一言で、実玖は元気を取り戻したみたいだった。
「さて…じゃ、暗くならないうちに行こうか」
そして私たちは、託児所を後にしたのだった。

さて問題。璃衣愛のトランクを右側の出口(太い線が無い部分)から出すには、トランクをどう動かせばいいでしょう?ただし、どのトランクもレールにはまっているので、前後にしか動けません。つまり例えばAやBは左右にしか、CやDは上下にしか動けない…という事ですね。璃衣愛のトランクさえ出せれば、残りのトランクの配置は気にしないでいいですからね。もちろん疾風みたいなことしちゃダメですよ。スライドだけで出して下さい。


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