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ときのうた

Day 3 〜フェイク・パニック〜


「彼女が四人の男について書いたなかに、この四人のうち三人には、彼女と共通点がある、そして彼女を脅迫したのはもう一人の四人目の男だ、というのです。」
エラリィ・クイーン『大統領は遺憾ながら』より

…例えば、私はゲームが好きじゃないの。それは、疾風のためにちょっとくらい興味は持ってあげようと思うけど…でも私には、レベルを上げる時間やアイテムを集める時間も、正直無駄にしか思えない。いや、そんな事をいったらこの世の出来事は全て無駄かもしれないけどさ、でもレベル上げのために必要な知識(どこで倒すといいとか、どんな装備にすればいいとか…)を覚えるなんて、何だか倒錯しているような気がしてさ。今のはRPGの話だけど、それ以外でもそうだよ。たとえば恋愛シュミレーション!あれだって、そんな思い通りに動いてくれる男の子も女の子も、普通に考えればいないじゃない?それに私くらいカワイイ子ならともかく、そんなに可愛くない女の子は絶対ひがむと思うなぁ。「なんで恋愛シュミレーションゲームには美女しかいないのよ!」って。確か「模倣犯」にもちょっぴり、そういうフェミニストの意見は載っていたと思うの。でもさ、それなのにその人たちは、イケメンを求めていたりするんだよねえ。テニプリとか、きっと大好きなんだろうなぁ。…それ以外のゲームでも、例えば「脳力アップ」とか、わざわざゲームでやる気もないし同じパターンの問題にしか対応できないと思うし、それにそもそも老後のために脳力を鍛えて、そのまま死んじゃったら意味もないしね。スポーツゲームやいわゆる「音ゲー」だったら実際に体を動かした方がいいと思うし。レースゲームはまだアリだけど、でも操作に慣れるまですっごく時間がかかるから結局飽きちゃうんだよね。私はどこかの大人みたいに「ゲーム脳」だの「悪影響」だの言う気は無いけど、やっぱり好きになれないんだ〜。
そう、それからそれを模倣した現実の殺人事件だってないわけじゃないのよ。ほら、「絶叫城殺人事件」とかさ。それにあれは忘れもしないよ…。ほら、疾風は覚えているでしょ?ルナティック殺人事件。あれなんて、もろにゲームが影響を与えた殺人事件じゃないの!あれ、本当にショック大きかったんだからね!だから、私はゲームとはしばらく関わりたくないの!

「…もう!分かったよ、美寛。そ〜いう理屈はもうやめて」
私の向かいで璃衣愛が言う。今は朝の9時。疾風と実玖も私の家に来ている。パパとママは、パパの休暇が取れたからといって、さっさと2人でドライブにいってしまった。だからこの家には、今はお姉ちゃんと私たち4人しかいないの。
「結局、美寛さんはAに行きたくないんですね…」
Aというのは隣の県?にある電気街なの。って、これは伏せ字にする意味がない気もするけど…。実玖や璃衣愛は行ってみたいらしいんだけど、正直私は行きたくない。
「だいたい美寛、何で行きたくないの?」
「それはね…」
璃衣愛の質問に、お姉ちゃんが笑顔で口出ししてくる。幸い(?)お姉ちゃんは、今日は長袖にロングスカート。もっとも昨日のこともあるから、疾風もさることながら特に実玖は、全然お姉ちゃんのほうを見ていなかった。それにしてもお姉ちゃんは私たちの話を聞いていたのね…。さっきから東京テレビスタジオ(通称TTS)の朝の情報番組をず〜っと見ていると思っていたのに…。ちなみにそのテレビは、平穏なF県F市H区の市場を映し出していた。
「きっと、みひろちゃん…ハヤ君が、他のメイド服の女の子に見とれちゃうんじゃないかって、心配してるの」
「お…お姉ちゃん!!?」
私は驚いてお姉ちゃんを睨みつける。でも、これくらいじゃお姉ちゃんは笑顔を崩さない。
「美寛…その反応は図星でしょ?」
璃衣愛からきつい一言。もぉ〜!!…実玖も璃衣愛にやんわり味方する。
「美寛さん…きっと、心配しなくても大丈夫ですよ。AよりはIやNの方が、今はかわいいメイドさん、多いらしいですし。行ってみませんか?」
そういう問題じゃな〜い!!私は思いっきりおねだりの目を使って、疾風を見る。
「ね…疾風…?」
すると疾風は、こう言ってくれた。
「…美寛は、どうしても行きたくないみたい。だからさ…」
うんうん。
「美寛は、置いていく?」
「なっ!!!?」
私は驚いて疾風を見つめる。…疾風、何を言い出すの!!!?
「あ、そうしよっ!そしたら私、両手に花だし」
璃衣愛が勝手に疾風と実玖の腕を組む。実玖は笑顔を見せつつも、ちょっぴり思案顔だった。
「璃衣愛ちゃん…それはやめましょう…。きっと、疾風さんが一人になっちゃいますよ…。それにそもそも、両手に花は女の子を2人連れた男の子に使う言葉じゃないですか?」
「じゃあ俺、雅さんと一緒に行くよ。ならいいだろ?…雅さん、今日って都合いいですか?」
「うん、私は大丈夫だよ〜。みんなで行こっか〜?」
私は大声でみんなの話を遮る。
「ち…ちょっと、待ってよ!!!もう、分かったから!!!!行くって言えばいいんでしょ!!!?」
「最初からそう言えばよかったのよ」
璃衣愛が笑顔を見せる。…というわけで、今日はAに強制連行されることになったの…。

A駅はコンコースの中から、既にゲームやマンガ一色だった。疾風や実玖は全然違和感なさそうに歩いているし、璃衣愛もなんだか楽しそう。でも私は…正直、かなりブルーだった。私の中ではこれは、「夏の館」に連行された時と同じくらいショックが大きいかもしれないなぁ。自分というアイデンティティを生存させる究極のサバイバル、みたいな…。
「美寛、この街では『私なんか、こんなものに全然興味ないんだもん』って顔してるほうが軽蔑されるからね。気をつけなよ」
もう、疾風ってば〜!いくら演劇部出身の私でも、無理なものは無理なの!!私は出来るだけ目立たないようにしていた。でも、私のかわいさだと、どうしても目立っちゃうよね…。辺りを見回すと、本当にここは日本じゃないような…二次元の世界のような気さえする。私たちはこれからどこに行って、どんな魔物と戦うんだろう?って感じ。例えば私のジョブは何かな、とか…?顔も衣装もカワイイ、踊り子かなぁ…。
「美寛ちゃんはモンクかな。素手の攻撃力が高いしさ」
そう横で言う疾風を私はぶっ飛ばした。…実玖が小さな声で、何かを囁く。
「基礎攻撃力120…ギルガメよりも高いですね」

「あ…ちょっと寄らせてもらっていいですか?」
実玖はそういうと、さっさとどこかへ入っていく。…ここは、何?まさかパチンコとかするところじゃ…?
「ここ、ゲーセンだよ。そうは見えないかもしれないけどさ」
疾風に教えてもらってから、安心して私たちは中に入った。入り口を入ってすぐのところに、UFOキャッチャーが置いてある。中にあるのは緑色ベースの時計のマスコット人形…あ、これってフジサンテレビの朝のニュースで出てくるマスコットだね。人形はどれも7時を指していた。
「実玖、これ取って!」
璃衣愛がその中の人形を指差す。実玖は既に財布からコインを取り出していた。
「ええ、いいですよ」
実玖は100円入れる。…って、まさかこの子、1回で取るつもりじゃ…。実玖の目がいつになく真剣になる。キャッチャーは1つの人形の上で止まって、静かに下りていく。その腕が人形をしっかりと捕まえ、運んでいった。実玖は下の受け皿から、人形を取り出して璃衣愛に渡した。
「うま〜い!!」
「よくやってますからね」
私たちは店内を見てまわる。するとかわいいアクセサリがとれるゲームがあった。アクセサリがUFOらしき置物の上においてある。私は実玖を呼んできた。
「実玖、これ取れる?」
「え〜っと、これ…何だろう?初めて見るゲームですね」
実玖は現在の状況とルールを眺めている。ちなみに現在の状況はこんな感じ。

UFO出題

ルール
アクセサリの乗ったUFO(盤上の◎)を、他のUFO(盤上の@〜D)を上手く使って、盤面中央の穴(盤上の●)の上で停止させ、落としてください。各UFOは、上下左右の各方向にいる他の一台を、自分の隣のマスまで引き寄せることができます。引き寄せる際に、途中で止めることは出来ません。中央の穴には「他のUFOにぶつかって停止しない限り」止まれません。普段はその上を通過して進むことになります。これは他のUFOも、アクセサリの乗ったUFOも同様です。なお、連続して同じUFOが動き続ける間を「1回」とします。例えばDは、Aを使って2つ上へ、次にBを使って2つ左へ動けますね。この時Dは2度動いていますが、これは「1回」の動きと考えます。 …さて、以上のルールでアクセサリの乗ったUFOを穴から落としてください。ただし、UFOを移動させられるのは「5回まで」です。

「えっ、5回!?」
そもそも何でこんな変なゲームが、ゲーセンに置いてあるんだろう…?その横で実玖は考え込んでいた。…あれ?疾風と璃衣愛はどこに行ったの?私は辺りを見回す。見える範囲にはいないなぁ…。
「…あ、できた」
私の横で実玖はそうつぶやくと、すぐにUFOを移動させ始める。そしてたった3回目の移動で、穴の真上にアクセサリの乗ったUFOを止めた。…実玖、早いなぁ…。
「美寛さん、どうぞ」
「へへっ、ありがと!…ところで疾風と璃衣愛はどこ?」
「璃衣愛ちゃんなら、ゲーセンの外の電気屋さんですよ。疾風さんは…見てないですね。とりあえず璃衣愛ちゃんと合流してから探しましょうか」
私たちはゲームセンターを出る。璃衣愛はその前の電気屋さんで、街頭テレビを眺めていた。どうやら何かのアニメみたい。茶髪でショートカットの女の子が、海辺で魚と話している…って何のアニメ、これ?
「璃衣愛ちゃん、お待たせしました」
実玖が声をかける。
「あ、実玖…すごいよね、やっぱりこの街」
「そうですね〜。…あ、そのアニメ」
実玖は璃衣愛と同じ画面に目を向ける。
「ウチ、この先生の絵、大好きなんですよ。テレビでやっているのは知っていたんですけど…TV TOKAI系列はE県じゃ映らないんですよ」
「えっ?そうなの?」
「ええ…西海放送とか、い〜テレビとかしかないですから…。ところで璃衣愛ちゃん、疾風さんがどこに行ったか知りません?」
「えっ?見てないよ…美寛と一緒じゃなかったの?」
璃衣愛は私のほうを向く。
「あ、うん…」
「珍しいね。美寛なら普通に『半径3メートル以内の世界でもっともっと引っ付いていたい』とか言うと思った」
「もう、璃衣愛!私だってそこまでは言わないよ!…束縛しすぎると嫌われちゃうしさ…」
「それくらいは分かってるんだ。…え、でもどこに行ったんだろう?」
私たちは歩きながら辺りを見回す。なんだか…嫌な予感。私は思わず口にしていた。
「まさか…どこかのかわいい女の子に見とれてるとか…」
「…?あれ?あそこの、疾風くんじゃない?」
璃衣愛が指差す先には、確かに疾風がいた。私は思わず駆け寄る。
「疾風…!!」
疾風も同じ電気屋さんにいた。ただ、この街の電気屋さんは広いからね。私たち3人がいたのはお店の東側だったんだけど、疾風はお店の北側にいただけだったの。
「えっ…ああ、美寛…実玖に何かとってもらったの?」
え…?疾風の声、何かヘン…?私は思わず横を見る。つまり、今まで疾風が見ていた街頭テレビ。そこに映っていたのは、日本生活テレビのトーク番組で、今日のゲストは今人気のアイドル…ってことは…!!
「疾風〜?…疾風くんはここで何を見ていたのかな〜?」
私は疾風に詰め寄る。
「み…美寛、誤解だよ」
私は疾風を蹴っ飛ばす。後ろでは実玖と璃衣愛が、のんきに話している。
「この子、私たちより年上には見えないよね」
「ギザカワユス、ですよね」
「それより美寛の予知能力というか何と言うか…すごいよね。ミラクルガールズみたい」
「ですね。汎エーテル教団とか、メタナチュラル協会とかの力でも借りてるんでしょうか?」
実玖はそう言いながら疾風に近寄る。
「痛恨の一撃、ですね。…疾風さん、薬草でもあげましょうか?」
「…それより世界樹の雫がほしいな」

「美寛…ごめんってば」
疾風の声を私は無視する。しばらく冷たくしておかなくちゃ。
「美寛さん、機嫌直しにちょっとしたパズルはいかがですか?」
「えっ?なになに、実玖?…って、まさか璃衣愛みたいな問題じゃないよね」
私は疾風を無視して、実玖のほうを向く。
「ええ、違います。いいですか…?ある人が、ある地点から真南に10キロメートル、真東に10キロメートル、真北に10キロメートルと移動して、元の地点に帰ってきました。ある地点はどこですか?」
「何だ、知ってるよ。北極点でしょ?」
私が得意げにそう言うと、実玖も笑顔を見せる。
「解が不足していますよ」
「…えっ!?」
「他にも条件を満たす地点があります。もちろん、璃衣愛ちゃんみたいなトンチじゃないですよ」
私は考え込む。でも…そんな場所、他にある?…私は疾風のほうを見た。
「疾風…じゃあ、これが分かったら許してあげる」
「本当?ありがとう、美寛」
そう言うと疾風はすぐに、実玖のほうを向いた。
「南極点から10キロとちょっと離れた円周上、だろ?」
「ご明察です」
…な、何それ!!?私と璃衣愛は疾風の顔をみつめる。
「いい、美寛?途中で真東に10キロ移動するだろ?その時に、南極点を中心とした円周10キロメートルの円上を移動すればいいのさ。だから…虫眼鏡の、丸いところを下にしたような図だよね。東に10キロメートル移動した時に、円を回って元の地点に戻れば良いってことさ」
「そういう事ですね。ちなみに円を回るのは1周でなくても、2周でも3周でもいいわけですから、その意味では解は無数にあることになります」
「う〜…やっぱりそういうのはニガテだよっ!!」
璃衣愛が真っ先に音を上げた。
「だいたい普通の人がそんな移動できるわけないじゃない!わざわざそんな事をするために北極や南極に行く人なんかいないよ!」
「璃衣愛ちゃん…前も言いましたけど、そういう前提にケチつけても、話が進まないんで…」
「私はそういうのはダメ。こういう問題の方が面白いじゃない?『カタカナ3文字で書ける固体、その1字を変えれば気体、さらにそれに1字を足せば液体になる例を探せ』みたいな」
それを聞いて私たちはまた考え込む。まず口を開いたのは実玖だった。
「えっと…それって例えば、サンゴがサンソに変えられるってことですよね。でも…」
「そう、そうだよね!私もヨウキ(容器)をクウキに変える、とかは思いつくけど…そこから何か液体に変わる?」
「ええ…それが…ちょっと、思い浮かばないですよね」
その時、疾風が急に笑い出した。
「もう…璃衣愛、そういう事するか、普通…?」
「あ、疾風くん分かった?さっすが〜」
「ちょっと待って、疾風、まだ言わないで!!」
疾風はちょっぴり笑顔を見せて頷く。私と疾風の関係は、いつの間にか元通りになっていた。実玖は右手を右耳のあたりにもってきて色々と考えていたけど、やがてため息をつく。
「う〜ん…ちょっとしばらく、頭を休めたほうがいいかもしれませんね。ところで疾風さんは、何かクイズを知っていたりしませんか?」
「う〜ん…知ってはいるけど、実玖専用だな」
「ゲームネタですね。ちょっと1つ下さい」
すると疾風は、目を上に向けてこんなことを言った。
「聖剣伝説Legend of MANAで、一周目でサボテンくん日記を完成させる時、ドミナの町には何回入ればいいか、その最低数を答えよ…とか。ただし『楽器作製』でドミナの町の町外れに入るのも1回と数える」
実玖はまた考え込んでしまった。

さて…今日は何事も無く終わると思っていた帰り道…私たちはちょっとした事件に遭遇するの。それは、駅を降りてすぐのところで始まる。
「あれ…?パパ!?」
「美寛!」
私たちはパパのところに駆け寄る。パパは私服姿だった。…もしかして、ドライブ帰りにそのまま呼び出されでもしたのかな…?
「…あ、もしかして、張り込みだった?」
「いや、違うよ。ただ、捜査をしていることには間違いない」
言い忘れていたけど、私のパパ…雪川隆臣は警察官なの。
「どんな?…何があったの?」
「ここでは話せないよ。じゃあな、美寛」
そう言ってパパは行ってしまった。疾風が後ろからそっと囁く。
「美寛…ただでさえ夜闇館事件の後なんだから…首を突っ込まないでよ」
「へ〜、警察官にしては愚直じゃないイメージの方ですね。二階堂警視正みたい」
実玖がそんな感想を漏らす。それは、誰もがヒース刑事のような人じゃないってば。
「ねえ実玖、何ならパパに話を聞いてみない?」
「えっ!?…でも、守秘義務ってありません?」
「いいのいいの、私の家は琴葉ちゃんの家と一緒だから」
結局私たちは、4人とも私の家に来ることになった。

「全くもう、美寛は…」
「パパ、いいでしょ?どうせ明日には分かるんだから」
「分かった、分かったよ…。後半の話は絶対に人にするんじゃないぞ」
私たち4人は、パパから話を聞きだすことに成功した。
「東海林静香は知っているか?」
私たちは頷く。彼女は有名な女優で、たしか海外でもその技能を高く評価されていたはず。確かあれは…「銀のロザリオ」って映画だっけ?岸野麗夢の敵役で、すごくハマってたんだよね。私生活がハデ、ってことでも有名な女優だ。
「彼女が、何者かに襲われ、意識不明の重体なんだ」
「ええっ!!?」
私たちは一様に驚く。そんな…襲われた?
「詳しい経緯は省こう。とにかく彼女は襲われた。そして、その容疑者には4人の男が挙がっている。どうやら彼ら4人と親密に交際していたらしいな」
四つ股なんて、よくやる体力があるよね…。
「彼女は親しい女友達にこう漏らしていたらしい。『仮に誰かから求婚されても、私は誰にも応じない』ってね。しかし…全員が、ここ最近求婚したらしい。おそらくその中の一人が、凶行に及んだんだろう。ただ…生前の被害者が妙なことを言っていてね…」
ここまできて、実玖が急に口にした。
「『大統領は遺憾ながら』…そういう事ですか?」
「え?…霞賀くん、今何て?」
「美寛さんなら分かるでしょう?」
うん、もちろん。私はパパに説明してあげる。
「パパ、神崎のオジサマみたいなお話をするけど許してね」
神崎のオジサマとは、神崎龍牙というパパの友達であり名探偵なの。私にとっては師匠のような存在で、私が推理小説にここまで詳しくなっているのも、ひとえにオジサマのおかげ。
「エラリィ・クイーンは論理的な推理小説で知られているけど、彼ら(分かっているとは思うけど、エラリィ・クイーンは2人組なのよ)の短編の中には、いわゆる『論理パズル』として分類されているものがあるの。その中に、こんな作品があるのよね。ある人が死んで、容疑者が何人かいる。でも、実は被害者の生前の発言から、被害者と犯人以外の容疑者全員の名前に、何らかの共通点があるって事が分かるの。つまり、彼らと共通点のない人が犯人。そんな作品の代表作が、さっき実玖の言った『大統領は遺憾ながら』なの。他にも『双面神クラブの謎』とかがある」
私が話している途中に、パパは一度大きく目を見開いた。
「そうか…確かに、その通りだよ。生前の被害者は、こう言っていた。『4人の男性のうち3人は、私と共通点を持っている。その3人は、私が拒絶したのを受け入れてくれた』とね。…つまり、残りの一人が犯行に及んだ可能性がかなり高い」
「となると、その4人の名前を聞いたほうがよさそうですね」
実玖が身をちょっぴり乗り出す。パパは思案顔になった。
「どうやら…そうらしいな。偽名で話す気でいたが、これは本名で話したほうがよさそうだ。それじゃ、ここからは絶対に口外しないように」
パパはそう言ってから、容疑者たちの名前を言ってくれた。
「一人目は熱田良一。彼は劇作家として知られている。二人目は藤山修吾。最近頭角を現してきた男子プロゴルファーだな。三人目は星本ちしろ。あの女性のような男性芸能人だね。最後はトニー・タンブル・シンプソン。アメリカの富豪で、ちょうど今日本に来ている。全員に犯行当時のアリバイも無く、物証も無い…。さて、何か考えつくかい?」
私たちはじっと考え込む。といっても璃衣愛だけは上の空だった。それにしても…外国人まで混じっているの?きっと彼らの名前に、何か秘密があると思うんだけど…私はそのうち、考える気をなくして今日の出来事を思い出していた。実玖にとってもらったアクセサリを見る。それは、キラキラと輝いていた。今日のこと…今日のこと…?私は今日一日で起きた様々な出来事の場面を思い出す。
もしかして…!!
「パパ、分かった!!!」

それでは問題を4つ。まず、実玖はどうやってアクセサリを入手したでしょう?ルールは文章中に書かれている通りです。次に、璃衣愛のクイズの答え、分かります?それから美寛が閃いた、東海林静香を襲った可能性の高い人物とは一体誰でしょう?もちろんその人物は、隆臣の話した4人の中にいますよ。最後に、聖剣伝説Legend of MANAをした事がある皆さんは、疾風の問題も考えてみてくださいね。


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