ときのうた

Day 0 〜アンサー･パニック〜

まず…この章の後半部分に、「ときのうた」で出題されたパズルやクイズの解答が一挙に掲載されています。まだ考えきれていない、という方は、ぜひここを見る前に考えてみてくださいね。

さて…今回の作品は、もう完全に高田崇史氏の「千葉千波の事件日記」シリーズに影響を受けています。物語冒頭が「八丁堀」（またの名を「ぴぃくん」）のグチで始まるところも（ただし美寛ちゃんのグチには的外れなものが多いです…苦笑）、基本的に論理パズルを主軸としているところも、途中で脱力系の「とんちクイズ」が入っているところも、ですね。深駆も一応パズル作家で、この前「ゆめのうた」に漢字パズルと数独を使った暗号を持ち込んだことだし…と思って、やらせていただきました。この形式を創造してくれた高田氏にはただただ感謝です。こんな情けないオマージュ（とさえ言えないですね…）でごめんなさい。
実はこの作品、とんでもない方向転換をしているの。本当はこの作品、時間差アリバイトリックが主軸の殺人事件だったはずなの（苦笑）。二階堂黎人氏の「諏訪湖マジック」的なものを当初は目指していたのですが…。でも、何だかネタにできなくて、そんな時に高田氏の『試験に出るパズル』に出会ってしまい…。「時のうた」が「解きのうた」になってしまった感じ（苦笑）。でも、これはこれで面白いと思うんだ〜。
実玖と璃衣愛を出したのは、単純に書きたかったから。それに、やっぱりパズルといわれると、深駆のペルソナである実玖に登場してほしかったし、ちょっぴり素直になれた璃衣愛ちゃんにも出てきてほしかったし、あの重い重い「夜闇館の殺人」（←１２月公開予定！）を書き上げた後には、ものっすごいライトなものを書きたかったし…という事で。でも、発表順を前後させているから、読者の皆様にとっては３作連続でライトなんだよね…（苦笑）。今回、過去最大のゲームネタ、推理小説ネタです。基本的に知っている人だけが笑えるようなところ、本筋とは関係ないところにとどめているので…まぁ、気になる人は気になるかもしれませんが…お許しください。実は、深駆が過去に書いた小説（の中でも現存しているもの…苦笑）の話が各所にちょっとずつ入っているの。気付かれました？
で、今回は５章立てのオムニバス、って感じになりました。深駆としてはどれもメインディッシュかな、って思います。１章はサラッと飲み込めるように。２章は美寛以外の３人が地の文を話すのがポイント。３章が一応、どれかといわれるとメインかな。このパターン（「大統領は遺憾ながら」的パズル）、好きなので。４章だけはかなり毛色を変えて。謎はある意味、無理やりに（苦笑）。第５章の主軸はアクションにあるような（苦笑）。でも、深駆としてはどれもお気に入りなの。 それでは以下、「ときのうた」で出題された問題たちへの解答編です。

Day １
これは芦ヶ原伸之氏が考案した「駐車場パズル」の改作。本当は２単位のトランクが普通車、３単位のトランクが大型車という設定なの。とりあえずの解答は下図１の通り。…まだ短くなる予感もするけど。

Day ２
まずウソをついている子を確定させましょう。赤の子は美寛の「愛ちゃんは５人の中で一番お姉ちゃんなんだよね？」に「うん」と答えているからウソはついてない。次に黄色の子がウソをついていたと仮定すると、「自分は女の人と一緒じゃなかった」がウソになる…つまり、黄色い服の子は美寛か璃衣愛と一緒にいたことになる。でも美寛といた、というのは白の子の発言で違う。すると璃衣愛と一緒にいたってことになるよね。でも、璃衣愛ちゃんと一緒にいた子は、迷子になっているお姉ちゃんが「私と同じ髪型で、私と同じ水色の服を着ている」って言ってるでしょう？これは本当のことだから（みんな最初は水色の服を着ている、という記述は美寛がインフォメーションセンターに入った直後にあります）、彼女はウソをついていない。ゆえに矛盾するの。つまり黄色い服の子はウソをついていない。以上の条件から考えて見ましょう。まず、黄色い服の子は璃衣愛・美寛とは一緒じゃなかった。一人でいた（＝美寛たちの誰とも会っていない）のは赤い服の愛ちゃんで、疾風といたのは白い服の女の子…。ここから、黄色い服の子は実玖と一緒にいたことになりますね？さらに黄色い服の子は「唯ちゃんは雪組」といっています。黄色い服の子は本当のことを言っている子なので、自分のことを他人のようには話さない…つまり、黄色い服の彼女は「唯ちゃんではない」の。ところが、青い服の女の子は「唯ちゃんは背の低いお兄ちゃん（つまり実玖）と一緒にいた」って言っているの。これが矛盾ですね。つまり、もう一人ウソをついているのは青い服の子になるの。ここから後は、マトリックスで操作するだけです。下図２から、美寛のスカートにジュースをこぼしたのは、青い服を着た雪組の唯ちゃんでした。

Day ３
まず実玖の問題。これは山本浩氏が考案したＵＦＯ（Lunar Lock Out）というパズルです。解答は下図３の通り。
それから、璃衣愛の問題の答えは「コタイ→キタイ→エキタイ」なのでした。最高の脱力度（笑）。このクイズも芦ヶ原伸之氏の作品です。
では、美寛が思いついた東海林静香を襲った人物は誰？という問題。答えは熱田良一でした。だいたい、深駆が何であんなに長ったらしい、美寛の家やＡでの前置きを書いていたかというと、その中に伏線がちりばめられていたからなのですよ。多くのゲームネタにかき消されて分かんないかもしれないけど（苦笑）。熱田以外の３人と東海林静香にある共通点、それはDay ３の文章中に出てきた「テレビ局の名前」です。東京テレビスタジオ（通称ＴＴＳ）はトニー・タンブル・シンプソンの頭文字（ＴＴＳ）と一致しますよね。フジサンテレビはそのまま読むだけ。つまり「藤山」をちょっぴり変えて読めば「フジサン」ですよ。ＴＶ　ＴＯＫＡＩは「とうかい＝東海」に気がつけば、『東海』林静香と一致していることに気付くよね？最後に日本生活テレビは…分解するのです。日と生を足せば星になり、本はそのまま、活の字はカタカナに分解すればチシロ…ですよね？これで星本ちしろ。一番こじつけ（苦笑）。以上から、共通点が無いのは熱田でした。
疾風のクイズは一般的ではないので（苦笑）、次章で解説します。

Day　４
盛雄が詩織に新潮文庫版の「シャーロック・ホームズの帰還」を渡して、舞台が始まるまでに読んでみてくれ、最初の「空き家の冒険」は読まなくていい…って言ったのがヒントだったの。もし詩織が美寛たちとずっと話したりせずにあの本を開いていたら…詩織は「空き家の冒険」の次の作品を普通は読むよね。じゃあその作品はなんでしょう？…答えは「踊る人形」なの。これは有名だから解説しなくていいですよね？人形の手足の動きに法則性を持たせた暗号ものです。もちろん、疾風が「俺でも聞いたことがあるような話」というのはこれのつもりなの。…つまり、盛雄が舞台上でやっていた、あのアドリブの手の動きが、そのまま「踊る人形」なんです。何と対比させていたかというと、それは舞台前方で主役たちが食べていたものなの。最初の「アイス」、次の「オシルコ」、最後の照り焼きバーガーの「テリヤキ」がそれぞれ、１文字ずつ彼の手の動きに対応しているのです。あとは最後の動作に、これらの文字を合致させていくだけ。答えは「シオリアイシテル」→「詩織　愛してる」なのでした。舞台の上から愛の告白ですよ（笑）。…にしても、よく疾風はそれぞれの動作を覚えていられたと思うよ…（苦笑）。一応五十音順に並べ替えて表記するとこんな感じ。
ア→右手を上に上げてグー・イ→右手を上に上げてチョキ・オ→両手を体の横で水平に・キ→両手を胸の前で合わせる・コ→両手を上に上げてパー・シ→両手を９０度曲げる（重量挙げのような格好）・ス→右手を上に上げてパー・テ→両手を腰にあてる・ヤ→右手を前に・リ→左手を前に・ル→両手を上に上げてグー

Day ５
１つめのパズルは、もちろん（株）ニコリのパズル「美術館」ですね。実玖が言うとおり、本来は数字が無くても、１マスだけ余ってしまったり、そこに置かないと他のマスが照らせなかったりという場合には、数字が無くてもそこに照明を置くのですが、今回はそのルールを外しています。そうしないと暗号が成立しないからね。とりあえず答えは下図４の通りです。理屈が分かれば簡単、のはず。
２つめのパズルは、これまたもちろん（株）ニコリのパズル「数独」です。実玖が手紙の中で言っている「数字は独身に限る」とは、数独の正式名称です。日本ではナンバープレースとかナンバーロジックとかとも言います。まずこれを解くの。すると中央（１文字も数字が出ていないところ）に、９つの数字の並びが出てきますね？あとは、実玖が下に書いてある順番どおりに、この数字をたどるのです。スラッシュ（／）が単語の分かれ目だと気付けば読めますよね？これ自体は「名探偵コナン」の１４巻（だったかな）の暗号と考え方は同じです。あの時は固定電話の並びをそのまま使いましたが、その数字の並び自体を数独で決めてしまうところが、パズル作家の深駆流…かな？数独の答えは下図５の通り。出てくる言葉は「THANK　YOU　MY　AND　HT」なのでした。MYは雪川美寛のイニシャル、HTは月倉疾風のイニシャルです。

図２

全ての条件を整理すると、このようになるのです。これなら一目瞭然、だよね？

図３

※編者注：解答の一例です。各画像をクリックすると大きく表示されます。
なおこの問題は、当初5手解を模範解答とするつもりでしたが、編集中に3手解が発見されたものです。深駆による5手解の一例は以下の通り。
１→�@を２つ下に。�Cの上まで動かします。
２→�Cを３つ右に。�Dの左まで動かします。
３→�Dを２つ上に。�Aの下まで動かします。
４→�Bをまず２つ右に。３で動かした�Dの左まで動かします。次に�Bを１つ下に。２で動かした�Cの上まで動かします。さらに�Bを２つ左に。１で動かした�@の右に動かします。これが思いつくかがポイント。
５→◎をまず２つ上に。３で動かした�Dの下まで動かします。そして◎を２つ左に。４で動かした�Bの右に動かします。これで◎と●が重なり、賞品ゲット！というわけです。

図４

答えはこうです。左から７列目の下から６列目のマス（斜線のマス）が、光源も置かれず光にも照らされない唯一の場所。

図５

このようになります。上級手筋崩れの中級手筋連発で、初心者には苦しかったかもしれません…。あとは、中央の９つの数字のならびにあわせて、数字をたどるだけ。…あ〜、にしてもこの数独、解きなおすとなかなか出来がいいかも。（株）ニコリの投稿用にとっておけばよかった…（苦笑）。

最後になりましたが、皆様、色濃い「シンクの夢」に浸っていただけましたか？これからも皆様が、何か楽しい夢を抱えながら、この時を過ごしていけますように…。

Dreamily Yours　深駆