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此処に在る理由

第9話 Relationship
「すっかり夜遅くなっちまったな…」
翌日学校がある為、北海道からの長い道程を急いで帰って来た祥一郎と知之が、家の近くの夜道を歩いている。
「疲れたっスねー…」
そして、麻倉家の前。
「あれ?母さん仕事っスかね…まだ帰ってないみたいっス…」知之は玄関の鍵を開け入る。祥一郎も続く。
「なぁ、麻倉」靴を脱ぎながら言う祥一郎。
「何っスか?」
「お前、もう寝るのか?」
「え?」突然の祥一郎の質問に驚く知之。「お、お風呂入ったらもう寝ようかなって思ってるっスけど…」
「…そっか」そう言うと、祥一郎は部屋に向かって行った。
「……?」知之は怪訝そうな顔をしていた。

汐里が家の前に帰って来たのは、もう日付が変わった頃であった。
「ふぁー、疲れたぁ…って、あれ?リビングの電気が点いてる…?」
汐里は不思議に思いながら、家に入る。
「ただいまー…」
「おう、お帰んなさい」リビングから顔を出したのは、祥一郎だった。
「しょ…な、何やってんの?」数日前にあんな事があって以来碌(ろく)に口を利いていない祥一郎が、明るく自分を出迎えてくれたので汐里は驚いた。
「何って、夜食作ってんだよ」
「夜食って…あんたの?」
母さんのだよ」
「えっ…」汐里は、自分の耳を疑った。「い、今何て…」
「ほら、さっさと喰わねぇと冷めちまうぞ」祥一郎はリビングに入っていく。
その背中を見ながら、汐里は訳がわからなかったが、嬉しくなってつい笑ってしまった。

「でさぁ、そのうどん見たら納豆入ってんだもん、びっくりしちゃったわよ」
翌朝、笑いながら言う汐里。
「う、うどんに納豆っスか…」呆れ顔の知之。
「るせーな、それしかなかったんだよ」パンを頬張りながら言う祥一郎。「人が折角作ってやったってのに」
「それは感謝してるわよー」でも笑いながらの汐里。「ホント、ありがと」
「…けっ」顔をそむける祥一郎。
「…でさぁ知之」
「何っスか?」
「お土産、何買って来てくれたの?」
「あ……」焦る知之。「…か、買うの忘れちゃったっス…」

食卓に叉笑い声が溢れた。
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おまけ
というわけで長い長い話は終わり。お疲れ様でした。
最後はハートフルな感じに仕上げてみました。

「うどんに納豆って美味しいの?」と思った冒険者なあなたはぜひ試してみてください。そしてどうだったか教えてください(爆)。
もし意外と美味しかったら此処書き換えますので(笑)。

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