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Pinch Kicker

第7話 fantasista
ホイッスルが鳴った。
そして、歓声が起こった。
知之は、思わず閉じてしまった瞳を開け、頭を抱え屈み込んでいた体をよじらせて後ろを見た。ボールが、ゴールの中に入っているのだ。
「…ふぇ…?」
知之の眼が点になっているのをよそに、試合終了のホイッスルも鳴った。
知之は立ち上がると、堀江や桜庭の方を見た。二人とも、微笑んでいた。
「岩代が言ってたろ?」と堀江。「猪狩は、そんなに悪い奴じゃないって」
「まーったく、こんな点の取り方考えとったんかい」センターラインに向かう桜庭。「猪狩もキザな奴やわ」
「あ、あの…どういう…?」知之もセンターラインに向かう。
「つまり猪狩は、君がボールを恐がるってのを逆に利用したんだよ」堀江が言う。「わざと君をゴール近くまで連れてゆき、あの壁の中に混ぜて、そして君の顔面向けてボールを蹴ったんだ。ゆうべみたいに、君が頭を抱えて屈み込んで、壁に"穴"を作ったってわけだよ」
「…そ、そんなこと出来るんっスか…?」
「現にしたじゃないか」笑って言う堀江。「元々猪狩はミッドフィルダーで、シュートの技術はかなりのモノだったしね。猪狩だから――そして君だから出来たってコトさ」
「……」知之は驚きながら、センターラインに並び礼をした。

「ありがとうございましたっ!」
グラウンドの入口前。知之が、サッカー部員を前に深くお辞儀をする。
「おいおい、何にありがとうなんだ?麻倉」足を引き摺りながら浅倉が言う。「風祭商から1点取れたのは、お前のおかげなんだぜ?」
「そ、そんな滅相もないっス…」と知之。「僕なんか皆さんに迷惑だけかけたようなモノっスよ…」
「んなことないで?」桜庭が言う。「ホンマは、君をサッカー部員に引き込もうかなとも思てたくらいやし」
「そっ、そんな…」少し顔を赤らめる知之。「僕じゃ全然務まらないっスよぉ…」
「そう言うと思てた」笑って言う桜庭。その時、知之の背後から車のクラクションが聴こえた。
「あ、それじゃあ僕、そろそろおいとまさせてもらうっスね」再び深々とお辞儀をする知之。「お疲れ様でしたっ」
走り去る知之を見ながら、猪狩が誰に言うでもなくふと呟いた。
「彼の夢が何かは知らないけど、多分彼は成功するだろうな…」

帰りの車の中。
「そう言えば知之、あんたも足打撲してたんじゃなかったっけ?」
「え?…あっ!」
それから数日間、知之は足の治療に専念することになったのであった。
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あとがき。

はい、冴戒流サッカー物語、いかがだったでしょうか。
ホントにサッカーやってるシーンが他のシーンと同じくらいしかなくてびっくりしたかもですね^^;
いや、ホントに僕は知之くん並みにサッカー出来ないからなんですけど(笑)。
さて、冒頭コメントに書いたことですが。「リアル」同様今回にも、マンガのキャラ名がありました。
浅倉 葉介→麻倉 葉(シャーマンキング):「アサクラ」って名前のキャラが必要だったもので。
水野 成樹→水野 竜也+佐藤 成樹(ホイッスル!):「ホイッスル!」に関しては他にも、このキャラの学校・風祭商(→風祭 将)などどっかにあります。
あとは細かい補足をば。
神奈川県総体が実際こうなってるかどうかは知りません(爆)。つーかこんな不条理な方式取ってるトコの方が少ないだろーなぁ^^;
ローカル番組「ハナマルエイト」は「ライヴァル」にも出てきましたが、覚えてますでしょうか。実は元ネタの番組はもう終わっちゃったんですが、こっちはまだ続きますです(笑)。アナウンサーの重平さんもその番組出演者からもじりました。ちなみに「美少年グラフィティ」なるコーナーはないです(爆)。
PCだと分かりづらいんですが、3話で桜庭が手渡すドリンクの名前は「ポカリ」ではなく「ボカリ」(半濁音じゃなくて濁音なのだ)だったりします。やっぱ商品標章ですし。
海瀬の見たがってたドラマが「犬にやさしく」(勿論「人にやさしく」のもじりです)なのは、書いてた頃やってて見てたのでってことです(笑)。
つかさは自称・差し入れ部隊隊長を名乗ってますが、つかさは料理できません(笑)。差し入れは千尋や汐里が作ってます。
シュートのシーンが分かりづらいと言われましたが、ま、要は点が入ったということで。(ぉぃ
最後のシーンは僕もすっかり忘れてたことです(爆)。「リアル」とかでも普通に動き回ってるし^^;

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