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強盗犯・矢吹烈馬


プロローグ 大阪から
拝啓、今城悠樹君へ
僕は今、夏休みになったから駅の売店でアルバイトをしてるっス。
店長の小百合(さゆり)サンと2人で、夜6時から閉店時間の10時まで接客してるっスよ。
時々すごく忙しくなることもあるけど、普段は結構ゆっくりしてても大丈夫っス。
そんなある日の閉店間際のことっス。
「知之くん、外に出してる新聞とか中に戻してくれる?」小百合サンが言ったっス。
「あ、はい」言われたとおり、店の外に置いてある新聞の束を持ったその時、後ろから声がしたっス。
「すみません、まだお店やってはりますか?」
「え?」僕は振り返ったっス。するとそこには、背が高くて、長い茶髪で少し色黒な20歳くらいの女の人がいたっス。
「あ、まだ大丈夫ですよ」店の中にいた小百合サンが言ったっス。
「ホンマ?あーよかった。ほな、缶コーヒーとワイルドセブン1箱もらえます?」
「はい」小百合サンは缶コーヒーとタバコの箱を取り出してその人に渡したっス。「370円になります」
「370円…あ、すみません、ないんでこれで…」その人は財布から500円玉を出したっス。
「それじゃあ130円のお釣りね。はい」小百合さんはその人に小銭を手渡して言ったっス。「そういえばお客さん、もしかして大阪の人?」
「あ、よう分かりはりましたね」…思いっきり関西弁使ってるっスよ(^^;)とツッコみたくなったけどやめたっス(笑)
「こんな時間に大阪の人がこんな所で何の用なんですか?」小百合サンのその質問はちょっとお節介すぎるような気もしたっス。
「あぁ、ちょっと人に会いに…あ、ほなおおきに(^^)」そう言ってその女性は行ってしまったっス。

でも、その女性が会いに行くつもりだった人は、次の日あっさり分かったっス。

 
その女性は缶コーヒーを飲みながら街を歩いていた。
「このへんもしばらく来ぇへんうちに変わってしもたなぁ…」
ふと、女性の目に1つのコンビニエンスストアが飛び込んできた。
「あ、ついでやしあの子に何か買うていってやろ」
女性はコンビニの前にあるゴミ箱に空になった缶コーヒーを捨ててコンビニに入っていった。が、そのコンビニには客は愚か従業員の姿もなかった。
「すみませーん、誰かおらへんのですかー?」女性は店中に響き渡るような声で言った。
「あ、お客さん…」店の奥から30代半ばくらいの男性が現れた。「申し訳ありません、ちょっと今非常事態で営業してないんです」
「非常事態?」
「ええ、ですからちょっと別の店で…」と男性が言いかけた時、店の奥からスーツ姿の男性が数人やって来た。
「それじゃあ大坪さん、我々はこの映像に映った少年を探しますので、何かありましたら連絡してください」その内の1人が言った。なにやら紙を持っている。
「ええ…ご苦労さまです」男性は彼におじぎをした。その一行が店を出ようとしたとき、彼の持っていた紙がふと落ち、女性の足元に来た。
「あ、落としはりましたよ」女性はその紙を拾い上げた。ふと見ると、その紙にはなにやら画像が印刷されていた。「…ん?あれ?」
「あの、もしかしてその少年に見覚えがあるんですか?」落とした男性が女性に言う。
「ええ…だってこの子はあたしの…」


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