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強盗犯・矢吹烈馬


第2話 名探偵・里夏子
その夜、ある女性がコンビニまでの道を歩いていた。後ろからつけている人物の気配に気づかずに。
「どう?うまくいった?」彼女はコンビニに入った。店の中に店員以外誰も居ないことを確認してからその店員に言った。
「ああ、ばっちりだ。なんか弁護士みてぇな女が来てたけど、多分バレてはねぇよ」
「そう、それじゃあ早速"アレ"を…」
店員は監視カメラに手を伸ばした。その時。
「やっぱり、あんた達が犯人やったんやね…」
「えっ…」2人は入り口を見た。そこには、ビデオカメラを廻している見覚えのある女性と、やはり見覚えのある少年や少女、そしてスーツ姿の男性が立っていた。
「あ、あんた、昼間の弁護士…」
「すまんなぁ、あたし弁護士やなくて、あんたらに罪着せられて逮捕された矢吹 烈馬のただの姉なんや」
「え…?」
「あ、そうそう、防犯カメラに取り付けてた26万7千円は警察に渡したよ」千尋が言う。
「な、何だと?」
「秀島サンの友人の龍三(りゅうぞう)サンに聞いたさ。秀島サンと堤サンは高校からひそかに付き合ってるって」と羊谷。
「7時に防犯カメラのテープを取り替える時にその時刻を操作して、10時前に取り替えるときにまた元の時間に戻したんでしょ?レジの時間もいじって、9時に烈馬クンがここに居たように見せかけたってわけ」つかさが言う。
「実は矢吹君って関西弁使ってるっスよ。それくらいちゃんと証言しとかないとバレバレっスよ」と麻倉。
「そうやって矢吹に罪を着せ、カメラの裏に隠しておいた金を翌日の自分の仕事の時に頃合を見計らって自分の懐に入れれば、矢吹を強盗に見立てたまま金が手に入るって寸法だったんだ。二人で口裏を合わせた証言をしてな」篁が言う。
「ちなみに、この映像もここにいる刑事さんに渡すから、もう言い逃れはでけへんよ。そろそろ白状したら?」里夏子が後ろにいた中垣内にビデオカメラを渡す。
「…ちっ」秀島は舌打ちをすると、いきなり入り口に向かって走り出した。
「うわああっっ!!どけぇぇぇっっ!!」
「わあっ…」篁たちは入り口から逃れた。が、里夏子はそこから動こうとしない。
「どけぇっ、女ぁっっ!!!」
「ふっ…」里夏子は入り口近くに置いてあったビニール傘を手に取ると、走ってくる秀島の腹部に目がけて構え走った。
「どおおおっっっっ!!!!!!」
次の瞬間、秀島はその場に倒れていた。

気を取り戻した秀島 直人と堤 幸絵は警察に連行された。
どうしようもなく金に困り計画を企てたのだという。
パトカーに乗せられる幸絵に、里夏子は一言こう言った。
「他人に罪を着せるなんて、サイテーの人間やねんで、覚えとき」


エピローグ Great Sister

翌日、駅にて。
「ったく…なんで帰ってきたんや、姉貴」釈放された矢吹が里夏子に言う。
「ただあんたがどういう生活してるんか気になって来たんや、そしたらやってもない罪かぶせられたりして…せっかくの土日がパーや」
「あのなぁ…」
「それにしても、里夏子サンのあの胴はすごかったさ。秀島サンがぶっ倒れるくらいだったさ」と羊谷。
「まぁね(^^)」
「で?次はいつ来る気なんや?」
「さぁ?気が向いた時にふらりと来るとおもうけど」
「…あっそ」
その時、駅内アナウンスが流れる。「間もなく、2番線に列車が参ります」
「あ、ほなあたし行かな。じゃ、またな(^^)/」そう言うと、里夏子は去っていこうとした。しかし、彼女はふと足を止め、矢吹に小さく耳打ちした。
「あんたの彼女、カワイイし性格もよさそうなコやないの」
「なっ…(*・・*)」烈馬が真っ赤になってる間に、里夏子は去っていっていた。

 
拝啓、今城悠樹君へ。
結局里夏子サンは事件を解決してしまったっス。
里夏子サンの推理力にも驚いたっスけど、矢吹君の無実を証明しようとガンバる姉としての愛にちょっと心打たれたっス。
兄さんも、そんな風になったらいいんっスけどねぇ…(笑)
あ、そろそろ兄さん起こさなくちゃ。相変わらず寝起きが悪いから、夏休みは正午くらいになんないと自分で起きて来ないっスよ。
それじゃ、またっス。

PS.今度暇な時にでもこっちに遊びに来てみたらどうっスか?僕らがちゃんと案内してあげるっスよ^^


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