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Sleepless Mystery


第3話 〜真実は眠らない〜

「えっ?!澪が自殺じゃないって?!」
別室にいた女性4人は事件現場に呼び出された。
「そうや。澪は来週御崎山に登る予定やったんやろ?そんなヤツが自殺なんてするはずあらへん」矢吹はキッパリ言う。
「でも、トリカブトの毒が入ったビンが澪のカバンから出てきたんでしょ?」とつかさ。
「あれは真犯人が澪さんのカバンにこっそりあのビンを入れただけっスよ。そうっスよね、菅沼 綾美さん」
「え…」綾美の表情は一気に変わった。
「あ、綾美が…?」つかさと千尋は信じられないといった表情だ。
「な、何言ってるの?わたしが澪を殺したって言うわけ?何を根拠にそんなことが言えるのよ?」
「そうよ、綾美が澪のコーヒーにトリカブトの毒なんか…」と千尋。
「いや、綾美さんが澪さんのコーヒーに入れたのは毒じゃないっス」麻倉が言う。「入れたのはたぶん重曹か何かっスよ」
「じゅ、重曹?」
「恐らく澪はあのコーヒーを飲んでただむせただけやったんや。そしてそれを見て綾美は彼女に…」
「ま、まさかあのコップの水?!」
「そうや。綾美は澪のコーヒーに重曹を入れ、自分の手元の水に毒を入れておいたんや。そして澪がむせた時にさりげなく飲ませれば、まるで最初からコーヒーに毒が入っていたように見えるっちゅうわけや」
「その証拠に、コーヒーから若干の重曹が、あの水からも毒が発見されたっス。たぶん綾美さんのカバンの中から重曹が出てくると思うっスよ。ちなみに綾美さんも澪さん同様登山に行ってたから、トリカブトの毒は簡単に手に入れられたってわけっスよ」
矢吹と麻倉は完璧な推理を展開したつもりだった。がしかし。
「へぇ、それじゃ誰かがわたしをハメるために水に毒を入れたりしたかもしれないわよ?たとえカバンから重曹が出てきたって同じこと。もしかしたら千尋かつかさがやったかもしれないじゃない?あ、それともやっぱり澪の自殺かもしれないわ。わたしに罪がかかるようにして死んでいったのよ、きっと」
「う…」麻倉と矢吹は黙り込む。
「あら、もう反論できないのね。それじゃわたしが犯人だなんて言えないわね」
綾美は蔑むように笑みを浮かべた。その表情はまるで勝ち誇ったようだ。が、その時矢吹と麻倉の背後から声がした。
「いや、あなたが澪さんを殺したんだよ、綾美さん」
「え?」その場にいた全員が声のしたほうを見た。そこにいたのは、篁と羊谷だった。
「た、篁君と羊谷君?!」麻倉はびっくりして大声を上げた。
「驚いたさ、マクラ?俺たち、酔いつぶれて寝てたフリしてただけだったのさ」その羊谷の表情は、親にいたずらをした子供のようだった。「勝呂サンもこれにつきあってくれてたさ」
「え?勝呂サンがっスか?」
「ああ、あの人に一応事情言っておいたんだよ。な、勝呂サン」篁が呼びかけると勝呂は軽くうなずいた。そして篁は言う。「2人とも、案外いい推理してたじゃねぇか。ここからはオレ達にまかせとけ」
「別に探偵が変わっても、わたしが犯人じゃないという状況は変わらないのよ?何か証拠でもだすつもり?」と綾美。
「証拠も何も、オレと羊谷はあなたが毒を入れるところを見ていたんですよ」
「え?」
「あんた、俺たちが見てた事気づいてたはずさ。だから俺たちに、酔いつぶれさせてその証言をさせないために大量の酒を飲ませたさ。まぁ、俺たちはそれが毒だとは思ってなかったけどさ。違うさ?」
「…ちっ」綾美はうつむいた。「せっかく上手く反論できたつもりだったのに…」
「ま、まさか綾美、本当に澪を…?」千尋が問う。
「ええそうよ、わたしが澪を殺したの。等々力君をわたしから奪っていった澪をね」
「等々力クンって、今の澪の彼氏のこと?」とつかさ。
「…元々等々力君は、わたしと付き合ってたのよ。なのに澪は、代議士の息子である等々力君の財力だけを目当てに、わたしから等々力君を奪ったの。そして彼の父親が代議士を辞めた途端、澪は等々力君を捨てたの。等々力君、それ以来自暴自棄になっちゃって…。彼の人生を狂わせた澪のことを、どーしても許せなくなっちゃってね…」

勝呂に連れられて警察に連行される直前、綾美は千尋に言った。
「あんたは、烈馬君のそばにずっといてあげなよ」
「え…?」

エピローグ 〜リフレイン〜

「はぁー…」
翌日の月曜日の朝、学校で麻倉が大きなため息をついた。
「どうしたんや、麻倉君?」
「…僕、恋しちゃったみたいっス」
「恋?」
「う、うん…おとといからずっと、つかささんのことが気になって仕方ないっスよ…」
「なんだ、つかさかぁ。ほんなら、俺がいいシチュエーション演出してやるさ」
「べ、別にそんなことしなくても…」
「俺と千尋の出会いを演出してたのはどこのだれやったっけ?」
「う…(^^ι)」そこをつかれるとちょっと弱い(笑)。
「ま、"恋はあせらず"や。ガンバりや!」矢吹は麻倉の背中を叩いて勇気づけた。
「いっ、痛いっスよぉ」

その時、教室に篁と羊谷が入ってきた。
「うぅ…(―_―ι)」何かしら顔色の悪い感じの2人。
「どうしたっスか、二人とも?」
「いや…ちょっと頭が痛くてな」と篁。
「俺は気分が悪いさ…」羊谷が口を押さえて言う。
「…二日酔いやな」
「ホントにあの時は酔いつぶれたフリだったんっスか?」
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