inserted by FC2 system

Sleepless Mystery


第2話 〜自殺か他殺か〜

警察がやって来て、取調べを始めた。取調べをするのは若手の刑事、勝呂だった。
「えっと、被害者は板倉 澪さん、16歳。蓮井高校の1年生ですね。死因は恐らくこのコーヒーに入っていたと思われる毒物とみて、まず間違いないでしょう。彼女が倒れた時の状況を詳しく聞かせてもらえますか?」
「あたし達、今日ここで合コンしてたんです。それで帰り際になって、飲みかけだったコーヒーを澪が飲んだ時に急に咳き込み始めて…。綾美がそばにあったコップの水を飲ませたんだけど、どんどん苦しんじゃって…、それで…、澪…」つかさは思わず涙を流し始めた。
「なるほど…、その時澪さんの近くにいた人物は誰ですか?」
「えっと、僕と矢吹君、千尋さんにつかささんに綾美さんと、篁君と羊谷君の7人っス」と麻倉。
「ひ、羊谷…?」勝呂は一瞬驚いたような表情を見せた。
「何か?」
「も、もしかしてお師匠様の息子さん…?」
「お師匠様?」
「あ、いや、私の上司で羊谷 惣史という刑事がいるのですが、私が数ヶ月前に捜査一課に配属されてから難事件を2つも解決しておられるので、私はつい彼を"お師匠様"と呼んでいるのです」
「その2つの事件やったら、羊谷君の父さんっちゅーよりかは俺たちが解決したようなもんやで?」と矢吹。
「え?」
「俺と羊谷君、麻倉君、それに篁君は、秀文高校での事件も着付教室での事件も解決したんやで。なぁ麻倉君」
「うん」
「そ、そうだったのですか…。これはお見逸れいたしました。ぜひそのお力を貸してください」勝呂は頭を下げて言う。
「べ、別にいいっスけど…ただ…」
「ただ?」
「篁君と羊谷君、酔いつぶれて寝てるっスよ(^^;)」
「…は?」

勝呂は、ソファーで横たわって眠っている篁と羊谷の元へ行った。
「篁さん、羊谷さん、起きてください!」勝呂はソファーの横にしゃがんで2人に声をかけた。が、しばらくして勝呂は麻倉たちのもとへ帰ってきた。
「2人の様子どうだったっスか?なんか何かしゃべってたみたいだったっスけど」と麻倉。
「いや、どうも寝言を言っていたみたいです…」
「そうか…」呆れたように言う矢吹。「ほんなら、俺と麻倉君だけで解決するしかないみたいやな」
「そうっスね…」と麻倉。
「勝呂刑事!」警官の一人が勝呂に言う。
「どうしましたか?」
「死んだ板倉さんのカバンの中から、トリカブトの毒と思われるものが入ったビンが発見されました!」
「と、トリカブトやて?!」
「ねぇ、そういえば澪ってよく登山に行ったりしてたよね?」つかさが綾美に言う。
「そ、それは本当ですか?!」と勝呂。
「えぇ、澪は子供の頃から山に行くのが好きだって言ってました。わたしも時々彼女に誘われて山に登った事ありますから…」綾美が言う。
「それに澪や綾美がよく描いてたマンガの原作はミステリものだったから、もしかしたら毒とかそういうことにも詳しかったかもしんないね…」とつかさ。
「それじゃあもしかして、澪さんは自分でコーヒーに毒を入れたかもしれないってことっスか…?」と麻倉。
「その可能性は十分あるみたいやな」矢吹が言う。
「そんな…、澪が自殺なんて…」と千尋が言う。
「彼女が自殺する理由は何かありましたか?」勝呂が尋ねる。
「うーん…、何かあったかなぁ」つかさは見当もつかないという表情だ。
「そういえば…」綾美が言う。「澪、今付き合ってる等々力(とどろき)君と上手くいってないって噂を聞いたけど…」
「それじゃまさか澪はそのことで…?」

「どうもなんか腑に落ちないんっスよねぇ…」
千尋たち女性が別室で事情聴取を受けている間、麻倉が矢吹に言った。
「俺もなんやわからんけど引っかかっとるんや…。一体何やねん、これ…」矢吹は頭を掻きながら、ふと店の壁にかかっている絵を見た。それはヨーロッパのどこかの岬を描いているようだった。
「岬…みさき…あっ!!」矢吹は突然叫んだ。「御崎山や御崎山!澪は来週御崎山に登るって言うとったんや!!」
「あっ!そういえば確かに自己紹介のときに言ってたっスよ、"趣味はハイキングとイラスト。来週も御崎山に登るつもりなの"って!!」麻倉も言う。
「澪がそんな計画を立ててたっちゅうことは…」2人は声を揃えて言った。「彼女は自殺じゃない」
「ということは誰か別の人が澪さんのコーヒーに毒を入れたってことになるっスけど…」
「でも澪は最後に飲みかけのコーヒーを飲んで倒れたんやで?予め入れておいたのならそれ以前にとっくに倒れとるはずやし…。かと言ってテーブルの上に置いてあった食べ物はみんながてきとーにとって食べてたんやからありえへんしな…」
「他に澪さんが口にしたものって他にないっスよね?」
「…待てよ?まだあるやないか、澪が口にしたもん」
「え?…まさか、アレっスか?!」麻倉も矢吹と同じ推理に辿り付いたようだ。
「もしそうやとしたら、きっとあそこからあれが…」矢吹はそこを偶然通りかかった勝呂に言った。「勝呂サン、至急調べて欲しいんやけど」

数分後…
「矢吹さん、あなたのおっしゃる通りでした」勝呂は矢吹に言った。
「やっぱり、そうだったっスね」と麻倉。
「ああ、犯人はあの人しか考えられへんな」

丁度その時。
「…そろそろオレたちの出番だな」
「ああ…」
"二人"が小声でつぶやいた。
最初に戻る前に戻る続きを読む

inserted by FC2 system