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守るべきもの


エピローグ 〜After The Island〜

それから数日後。
「…いさん、兄さん、朝っスよ」
「…んー…?」相変わらず寝起きの悪い篁は、布団を抱きしめた状態で寝返りを打った。
「起きてくださいっス!」
「…あんだよ麻倉ぁ…もう少し寝かせてく…」
え?麻倉…?篁は異変に気づいて飛び起きた。
「なっ、なっ、なんでオメーがここにいるんだよぉっっ?!!」
「あ、起きたっス」

「え?オレが寝起き悪ぃから一緒に暮らす事にしただとぉ?」
麻倉家の食卓でパンを頬張る篁。
「そうよ、祥一郎寝起きが悪くて、3日に2日は遅刻するって同じクラスの羊谷クンに聞いたから、それじゃ一人暮らしは危ないと思って。昨夜二人がかりでここまで運んできたってわけ。」コーヒーを注ぎながら汐里が言う。「はい、コーヒー」
「ったく…お節介なことしやがって…」
「僕は兄さんの弟だし、母さんも兄さんの母親なんだから、兄さんのことくらい気にかかるっスよ」
「へいへいわあったよ、今日放課後オレの家から服とか持ってくるから」そういってコーヒーを流し込んだ篁は、学ランを羽織って鞄を持って外へ出ようとした。
「あ、ちょ、ちょっと待ってっス!!」麻倉もパンをコーヒーで流し込み、学ランを羽織り鞄を持って家を飛び出した。
「…まったく(^^;)」汐里はそんな2人を見ながら微笑んだ。

その日の放課後、篁達4人はいつものように生徒会室で話をしていた。
「はぁ、俺数学の補習かかっちまったさぁ」羊谷がため息をついて言う。
「そう落ち込むな羊谷、オレも落ちたから二人で仲良く補習に行こうぜ」笑って言う篁。
「なんで篁そんなに陽気さ(^^;)」
「オレは殆ど毎回補習かかってるからな」
「えばって言うことやないで、篁君」静かにツッコむ矢吹。
「そういう矢吹はかかんなかったさ?」
「俺はギリギリセーフや。麻倉君は?」
「僕は大丈夫だったっスけど…」
「そーいやマクラ数学得意だったさね」
「あ、そうそう」麻倉は鞄の中から封筒を取り出した。「氷上島の悠樹君から手紙が届いたっスよ」
「あぁ、そう言えば悠樹君と文通しとったんやったな。どんなことが書いてあるんや?」
「えっとねぇ…」
悠樹からの手紙には、あの事件以後島の活気は一時期滞ったが、人望の厚い葛城 舜が村長になってから、少しずつ元通りの雰囲気に戻り始めていること、箭内の秘書だった久世 里律子は今城荘で働き始めたこと、幣原リゾート開発による買収計画は白紙になったことが綺麗な字で書かれていた。
「えっと、それから…」麻倉は次の段落を見て、ちょっと言葉を詰まらせた。
「ん?何って書いてあるさ?」
「あ、べ、別に何でもないっス…悠樹君が深穂さんのことが好きだなんて一言も書いてないっスよ…」しどろもどろに言う麻倉だが、勿論手紙の続きに何が書いてあったか篁達はすぐわかった。
「へぇ、悠樹君あのコに惚れてるのさ?」
「なんかそんな気はしてたけどな」
「年上の女の子に恋をするなんて、まるでどっかの誰かさんみたいやなぁ」
「え…(*・・*ι)」
麻倉の顔はすぐに赤くなった。


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