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守るべきもの


プロローグ 〜From The Island〜

「ったく…、吉良(きら)センパイもなんでこんなに沢山のもの買わせたりすんだよ…」
「んなこと言ったってしょーがないさ。一応今はあのヒトが生徒会長なんだからさ」
篁と羊谷は、どう見ても多すぎる量の買い物袋を抱えて商店街の中を歩いていた。新しく生徒会長になった吉良は、生徒会室の備品の揃えの悪さを咎め、2人に備品を買いに行かせたのだ。だが、吉良が2人に渡したメモには膨大な量の品目が記されており、2人は商店街をあちこち彷徨いながらどうにかそれを買い揃えたのだった。
「でもよぉ、あのヒトってかなりワガママじゃねぇか?こんなに大量の備品、あんな小っさな生徒会室に入るかどうかもわかんねぇし…」グチりながらふと前方を見た篁。そこでは、"商店街大感謝イベント"の文字が書かれていた。
「何かやってんのか?とりあえず行ってみっか…」2人はそちらへ行った。
会場には10数人の人が集まっており、わりと盛り上がっている様子だった。
「おっ、時哉君じゃねぇか!」その中の1人が羊谷に声をかけた。
「あぁ、大橋(おおはし)サンさ?」羊谷はその相手と親しそうに話す。「ずい分久しぶりさね」
「羊谷、この人誰?」篁が聞く。
「この人は、この商店街の会長さん兼洋品店の社長で、オヤジとは古い付き合いしてる大橋サンさ。俺もガキの頃はだいぶお世話になったさ」と羊谷。「ところで大橋サン、これ何かやってるさ?」
「ああ、今"商店街大感謝イベント"ってことでな、商店街である程度買い物をしたお客さんにこの抽選器を廻してもらって、賞品をプレゼントしてるってわけだよ。時哉君たちも、そんなに買い物してるんなら券もらってるんだろ?」
「券?」そう言えばさっきから店先で何か紙切れをもらった気がする…篁は持っている買い物袋をその場に置くと、ポケットの中や財布の中などを探った。「あとは…これで全部かな」
「15枚か…それじゃ3回廻していいよ」大橋が言う。
「それじゃ最初俺が廻すさ」羊谷はそう言うと抽選器を廻す。出てきたのは緑色の玉だった。
「緑ってことは、4等か。それじゃこれだな」大橋が羊谷に渡したのはインスタントラーメン3袋の入ったビニール袋だった。
「ラーメンさ…(^^;)」ちょっと口惜(くや)しそうな羊谷。
「じゃあ次オレが廻すぜ」今度は篁が抽選器を廻す。出てきたのは明らかに低い等級のような白い玉だった。
「白はティッシュなんだ、残念だなぁ」大橋は篁にティッシュ箱を1つ渡した。
「なんかさんざんだな、オレたち」
「あと1回か…どっちが廻すさ?」
「そうだな…やっぱここはジャンケンで決めるか」
ジャンケンポン。勝ったのは篁だった。
「篁、頼むさ。いいの出してくれさ」
「任しとけ!」篁は気合を入れて抽選器を廻す。出たのは、金色の玉だった。
「おぉっ!!特賞が出た!!」大橋はそう言うと右手でベルを鳴らした。
「特賞?!なんかスゴイものがもらえるさ?!」羊谷が興奮気味に尋ねる。
「そりゃすげぇもんが当たったぜ。なんてったって…」大橋はじらすように間を開けて言った。「瀬戸内にある氷上(ひがみ)島への旅行4名分だ!!!」
「ま、マジかよ!!?」篁と羊谷は、その場で飛び上がって喜んだ。

…それが"あの人物"との再会になるとも知らずに…


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