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クリスマス・パニック?!

第4話 プロポーズ
「は、犯人が分かったんですか?!」
勝呂の声に、その場の全員が反応した。
「え?」と柏木。「それ、ホントなの?」
「ああ…但し最後にちゃんと確認しときたいコトがあるんだ」祥一郎が言う。
「か、確認しときたいコト…?」と原口。
「な、何だよそれ…」荻久保が言う。
「3人は、本っ当に面識は無いのかってコトですよ。どうせ警察が調べればすぐ分かってしまうんだから、本当は面識があるんだったら今の内に言ってしまってください」
「そ、そんなコト言ってもなぁ…」と緒方。荻久保と原口は何も言わない。
「本当に面識が無いんですね?」祥一郎が詰め寄る。「嘘だったら罪に問われますよ?」
「ねぇモンはねぇっての」と荻久保。
「分かりました…」祥一郎が言う。「今ので犯人は1人に特定されました」
「えっ…?!」驚く一同。
「ど、どういうコトっスか…?」知之が尋ねる。
「簡単なコトだ、3人の内2人以上が共謀して嘘をついてるって可能性が失くなった訳だから、先刻の矛盾した証言の中で嘘の証言をしたのが1人だけってコトになる。じゃあどうしてそのヒトは嘘をついたのか?」
「そ、そうか!」と勝呂。「その嘘をついてるヒトが犯人なんですね!」
「そういうコト。んじゃ、まずは足音についての証言を検証してみましょう。荻久保さんと緒方さんは"自分のトコは通り過ぎた"、原口さんは"自分のトコより手前で止まった"と証言した訳だけど…嘘をついてるのが1人だけであるなら、或る人は絶対嘘をついてないコトになるんですが、誰だか分かりますか?」
「え?えーっと…」柏木は個室を見て言う。「あ、そっか、荻久保さんは嘘をついてないってコトね」
「え?」と勝呂。「ど、如何してですか?」
「もし荻久保さんが嘘をついてるなら、嘘をついてるのは1人だけだから他の2人はホントのコトを言ってるってコトになるけど…この2人の証言は明らかに矛盾してるでしょ?」
「なるほどねぇ…」と汐里。「で、どっちが嘘をついてるの?」
「それは、トイレに入った時どの個室が空いていたかっていう証言を考えれば分かるぜ」祥一郎が言う。「状況から考えて、最後にトイレに入ったヒトが犯人なのは明白だ。緒方さんの"両隣は空いていた"っていう証言も、原口さんの"一番手前は空いていた"っていう証言も、これだけでは自分は最後には入ってないってコトになるケド…」
「それじゃあどっちか分からないじゃない」とつかさ。
「でも、此処で荻久保さんの証言が効いて来る訳だ。先刻の検証で荻久保さんは嘘をついてないと分かった訳だから、当然此処でも彼の証言は信用できることになる。"隣の個室は閉まっていた"っていう証言がね」
「そ、そっか…」知之が言う。「荻久保さんが入った時、既に緒方さんはトイレに居たんっスね」
「ああ、詰まり緒方さんは最後に入ったヒトではないんだから…」祥一郎は、その人物の前に立って言う。「嘘をついてるのは、あなただってコトになりますよね?原口さん」
「え…」言葉を失う原口。
「詰まり、寺田さんを階段から突き落としたのは原口さん、アンタだってことだ」
「ち、違う…」原口は冷汗を垂らしながら言う。「ぼ、僕じゃありませんよ…」
「うーん…でも確かに」と柏木。「今のはあくまで状況証拠、このヒトが犯人だっていう確証にはならないわね」
「そ、そ、そうですよ…ぶ、物的証拠とか、あ、あるんですか…?」と原口。
「ああ、あるぜ」祥一郎が言う。「あんたのどれかのポケットにな」
「え…?」驚く原口。
「この写真を見てくれ」祥一郎は1枚の写真を取り出す。
「これは…」と荻久保。「真紀の手の写真…?」
「そう、その中の、右手中指を見てください」
「右手の、中指…?」覗き込むつかさ。「…あれ、付け爪が取れてるわね」
「つ、付け爪…?」と勝呂。
「うん、マニキュアだったら擦れたりしてもこんなキレイに取れたりしないし…」
「可笑しいわね」柏木が言う。「確か現場にはそんなモノ落ちてなかったと思うし…、それじゃあ…?」
「ああ、原口(このヒト)は殺害時ちょっと大きめのコートを着ていた。捨ててそれが見つかった時、サイズが違うから自分は犯人と思われないだろうとでも思ったんだろうが、恐らく突き落とされた衝撃で寺田さんの爪から剥ぎ取れたその付け爪はコートの中を通って、このヒトのポケットの中にでも収まったんだよ」
「ちょっとすみません」勝呂は、原口の服のポケットを調べる。「…あ、此是は…」
原口のポケットの中から、水色の付け爪が出てきた。
「…決定的ね」と柏木。
「ど、如何して真紀を…?」荻久保が言う。
「…あの女が、僕を振ったから」原口の口から、ぽつりと言葉が漏れた。
「え?」
「僕は、真剣に彼女を愛していた。なのにあの女は…僕のプロポーズを一笑して…だから」
原口はその場に座り込んだ。その瞳からは涙が漏れた。

「あの原口ってヒト、非道いわよねー」
ショッピングモールの前で、つかさが言う。腕時計を見ていた知之が、ふと顔を上げる。
「振られたぐらいでその女を殺すなんてさー」つかさは伸びをして言う。「矢っ張り、男って信じられないわ」
「…つ、つかささんっ…」
「ん?なーに?」振り向くつかさ。
「あ、えっと…ぼ、僕は多分、もし振られてもそんなコトはしないと思うっス…あ、べ、別にだから如何こうって訳じゃないんっスけど、えっと…」顔を赤くして言う知之。
「其処よ、知之!」遠くから叉こっそりと言う汐里。今度は祥一郎もその様子を凝視している。
「ぼ、僕は、つかささんのコトが…」知之は顔を上げて言う。「…す、す
「あーっ!麻倉先ぱーい!!」
「…ふぇ?」振り向く知之。其処には、湊が居た。
「なっ、なんで其処でアンタがっ?!」汐里は思わずずっこけそうになりそうな勢いで言う。が当の本人らには聞こえていない。
「あ、矢っ張りそうだーっ!」目を輝かせて言う湊。「つかささんも居るし、何やってたんですかー?」
「え、えっと…」戸惑う知之。「そ、その…」
「ちょっと先刻事件に巻き込まれちゃってねぇ」つかさが言う。「それがさぁ、結構理不尽っていうか何っていうか」
そして、つかさと湊は話に花を咲かせ始めた。知之を置いて。
「…あーあ、12時過ぎちゃったっスよ…」知之は腕時計を見て呟いた。

というのも、彼は先週のテレビ番組「ハナマルエイト」でこんなモノを見ていたのだった。
「来週の1位は牡羊座の貴方。特に恋愛運が絶好調なので、クリスマスの日の0時丁度に告白すると想いが叶うでしょう。ラッキーカラーはネイビーブルー」

「…占いの嘘つき」知之はネイビーブルーのマフラーを見つめて呟いた。「…でも、まぁいいか」
そして知之は、つかさと湊に追いついて、いつも通り話しに加わった。
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おまけ
知之×つかさは結局進展せず、というコトでした(笑)。
何故あそこで湊が現れたのか?多分そゆ運命なんでしょう(爆)。
ちなみに毎度お馴染み(爆)のローカル番組「ハナマルエイト」ですが、これの元ネタになった愛媛のローカル番組は既に終わっていたりします^^;
でも変えるのも面倒なんでそのままにしてます(笑)。

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