Keys Quest

｢えっ、トモユキが王妃の子供だって?!｣
城の外で待っていたトキヤは、驚いた表情でリカコを見た。
｢そうや…あの破魔の石って、王家の血を引く人物やないと使えへん筈やから、おかしいなとは思ててんけど…やっと思い出したわ｣
リカコは、中空を見ながら言う。
｢今から16年くらい前の話や。当時の戦乱で王は国外に出とったんやけど、その中で城が襲われて、お妃様は命からがらとある民家に避難した。…それが、まあ、あたしら家族の家やったんや。城はぐちゃぐちゃになってもうたし、お妃様は懐妊しとっていつ生まれてもおかしゅうない状態やったから、あたしや、当時同じく妊娠中やったあたしの母とかと一緒に暮らしてたんよ｣
｢じゃあ、そのお妃サンのお腹にいた子って…｣
｢ええ…あたしも出産の場に立ち会うたから覚えてる。もちろん産まれたての赤ん坊やったけど、確かにあのトモユキっちゅう子とそっくりやったわ｣
｢てことは、あいつは…｣

｢ぼ、僕が、お妃様の子供で…ツカサ様の弟…?｣
すっかり気が動転してしまっているトモユキ。
｢ええ…正式な手続きを踏んで生み育てた子ではなかったから、ある国民の家に預けたんだけれど…血は争えないわね。貴方は見習い魔導士として城に仕え、姉であるツカサに心魅かれていたなんて…｣
｢…ほな、彼にあのペンダントを託したんも…｣
｢ええ…息子の身を案じない母親は居ないでしょう?｣
王妃は、混乱中のトモユキに近寄り、頭を撫でた。
｢…今まで言えなくてごめんね。ツカサと付き合わせることはできないけれど、これからは…｣

旅を終えたパーティーは、それぞれの道へとわかれていきました。
それから、しばらくした頃。小高い丘の上にある家の玄関先での話です。

｢…い、いらっしゃい｣
ドアを開けたレツマは、来客を見て思わず固まってしまう。
｢…何なんっスか、その微妙な間と引きつった笑顔｣
｢いや…君が前に訪ねて来た時は、大変な旅につれてかれてもうたから｣
｢うわ、何っスかその疫病神扱いみたいな言い方｣
｢大丈夫だよ、あたしも居るし｣
来客のトモユキの横から、ツカサが顔を出した。
｢え…姫様?!｣

｢まさかお姫様までつれてくるなんてねー｣
お茶を淹れながら言うチヒロ。
｢二人とも、うまくやってるわけだｗ｣
｢って、そ、そんな、僕っ…｣
思いっきり顔を真っ赤にするトモユキ。
｢そうそう、別に恋人になったわけじゃなくて、正式に姉弟として認められて、あたし専属の護衛になってくれてるんだもんね｣
｢ふーん…それで?何でお姫様まで引き連れて俺らんとこなんか来たんや?まさか、また旅に行く羽目になるんちゃうやろな?｣
｢あ、それは大丈夫っス。えっと…｣
トモユキは自分の荷物を手探りし、あるものを取り出した。
｢こんなお手紙が届きまして…｣
｢手紙?｣

拝啓、トモユキ様

お元気ですか?ぼくも兄も元気にしています。
遺跡では、本当にありがとうございました。
あの時いただいた指輪のおかげで、ぼく達の研究は大きく進展しています。
この前、トキヤさんも遊びに来てくれました。
宜しければトモユキさんもいらしてください。
兄と二人で楽しみにしています。

ユウキ

｢ほぉー…懐かしいなあ、ユウキ君とノゾム君｣
トモユキが持ってきた手紙を見ながら、レツマが感慨深そうに言う。
｢他の皆さん、どうしてるっスかねー…トキヤさん達はやっぱり色んな町を旅してるんでしょうけど｣
｢まぁタカムラ君はだいたい予想つくわな。あとは…トシミちゃんかな｣
トシミは唯一生き残った魔族だったが、今はボランティア活動に従事しているという。
｢…また、皆さんに会いたいっスね｣
トモユキはぽつりと呟いた。
｢せやな…ほな、今度は”旅”やのうて、”旅行”にでも行こか｣
｢…はい!｣

平和になった国で、彼らは次はどこへ行くのでしょうか。
その鍵は、誰も知りません。

おしまい

レツマの恋人・チヒロ：仙谷 千尋
姫・ツカサ：古閑 つかさ
王・ソーシ：羊谷 惣史
王妃・シオリ：麻倉 汐里
妖精(姉)・ミナト：園川 湊
妖精(弟)･カイト：園川 楷登

研究者(兄)・ノゾム：結城 望
研究者(弟)・ユウキ：今城 悠樹
女盗賊・ミホ：葛城 深穂
魔王の妹・トシミ：弥勒 寿美

自警団：勝呂 槍太、柏木 怜美、霞 春彦
宿屋の女主人：海瀬 紘乃
宿屋の姉弟：石原 瑠璃、石原 琥珀
行商人：音桐 よーじ(特別出演)

魔王・ミロク：弥勒 秀俊