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Keys Quest

第4話
「此処に21個の玉がある」
タカムラは古びた机の上に、水晶のような輝きを放つ色とりどりの玉を転がした。
「ゲームのルールはこうだ。今からお前らのどっちかとオレとで交互にこの玉を取っていく。先攻・後攻はお前らに決めさせてやるよ。但し、1回に取れる玉は1個から3個だ。4個以上取ったり、全く取らなかったりしてはいけない。それを繰り返して行き、最後の1個を取ったほうが勝ちとする。チャンスは4回やるが、2人で2回ずつやってもよし、どっちかが4回ともやってもいい、その辺はお前らで好きに決めろ。1回でもお前らが勝ったら、オレはお前らについてってやるよ」
「…分かった。1回勝ったらホンマに俺らについて来てくれるんやな?」
「オレはこれでも約束は守る男なんでな。…但し、4回ともオレが勝ったら俺は何があってもついて行かねえからな」
「ああ」
凛としているレツマの横で、トモユキは焦りの表情を浮かべている。
「だ、だ、大丈夫なんっスか…?!なんか、すごく難しそうっスけど…」
「大丈夫や、チャンスは4回もあんねん。とりあえず先に君が2回挑戦してみ。どうせタカムラ君のことやから2回とも勝ってくる筈、その様子を見て俺が勝利の方程式を見出したるから。とりあえずルールは飲み込めてるやろ?」
「は…はい、わ、分かりましたっス…」

「それじゃあ、1回戦宜しくお願いしますっス…」
タカムラの対面につくトモユキ。レツマは少し離れたところからその様子を見ている。
「ああ…先攻と後攻はどっちにするんだ?」
「それじゃあ…とりあえず先攻で…」
「先攻な。それじゃ、お先にどうぞ、見習い魔導士さん」
「はい…って、あれ、僕、魔導士だって言いましたっけ…?」
吃驚した表情を浮かべるトモユキに、タカムラは口許に笑みを浮かべて言う。
「これでも賢者だからな」
「騙されんなよートモユキ君。そんなカッコしてたら誰でも分かるんやから」
「あ、そ、そっか…」
トモユキは自分の服装を見て少し恥ずかしそうにうつむく。タカムラは小さく舌打ちをした。
「え、えっと…それじゃあ、3個…」
3個の玉を手許に寄せるトモユキ。
「ふーん、じゃあ、オレも同じだけ」
「そ、それじゃあ…1個を」
「んじゃ、オレはさっきと同じ数を」
慎重な手つきで玉を取るタカムラ。
そして、トモユキが2個、タカムラが2個、トモユキが3個、タカムラが1個取ったところで、机上には玉が4個残った。
(最後の1個を取ればいいんだから、僕が1個取ってタカムラ様が2個取ってくれれば…)
トモユキはそんなことを考えながら、1個を取った。
「ふーん…じゃ、オレの勝ちだな」
そう言うと、タカムラは残った3個の玉を全て取った。
「えっ…あ!」
「最後の1個を取る、というのはこういうことも含むよな?」
「そ、そっか…そ、それじゃあもう1回っス!」
「望むところだ。次は先攻?後攻?」
机に玉を戻しながら言うタカムラ。
「それじゃあ…さっき先攻だったっスから、今度は後攻で」
トモユキも玉を全て机上に返す。
「ああ、んじゃオレから貰うぜ」
そう言うと、タカムラは玉を1個取った。

トモユキ1個、タカムラ3個、トモユキ3個、タカムラ1個、トモユキ3個、タカムラ1個、トモユキ2個と経過し、残り6個。
「そう来るか…そんじゃ、オレも2個」
「じゃ、じゃあ…って、あれ?また残り4個で僕の番…?」
そのトモユキの言葉に、レツマの瞳の色がふっと変わる。
「え、えっと…じゃあ、2個…」
「で、オレが残りの2個を貰ってオレの勝ち、と」
表情には見せないが、少し楽しそうに言いながらタカムラは玉を取った。

「ど、どうっスかレツマ様?分かりました…?」
トモユキはレツマのもとに寄ると、小声で尋ねた。
「ああ、大体な」
「えっ、ホ、ホントっスか?!」
「ああ、次の1回で、俺が勝ったるよ」
そう言うとレツマは、玉を全て戻し終えたタカムラの対面に来た。その表情は自信に満ち溢れている。
「さ、これで終わりにしよか、タカムラ君?」

「…随分、自信満々みたいだな」
タカムラは、レツマの顔を眺めつつ言う。
「ああ。君に来てもらいたいしな」
「ほ、ほんとに大丈夫なんっスか…?」
レツマの後ろで、不安そうに尋ねるトモユキ。
「ああ…ヒントは、2回とも最後の君の番が残り4個で廻ってきたっちゅうこっちゃ」
「そ、そういえばそうだったっスけど…それで?」
「考えてみ。このゲームは1回で1個から3個しか取れへん。残り4個の時、先攻が1個なら後攻は3個、先攻が2個なら後攻は2個、先攻が3個なら後攻は1個取れば、必ず後攻が勝てるやろ?」
「それじゃあ、4個で相手の番にさせれば良いってことっスね?でも、どうやってそこまで持ってくんっスか?」
「これを、21個まで拡大して考えてみたらええんや。いま、21個を4個の組を5つと1個に分けて考える。この5組それぞれについても、実はさっきのと同じことが言えるって分かるか?」
「…あっ、そうか!ということは…」
「ああ。相手の番には必ず残りが4の倍数になるようにすれば、さっき説明した手順を踏み続ければ勝てる。せやから…」
レツマは机の上の玉を1つ手にして言う。
「先攻を選び、玉を1個取って残りを20個にする。これが必勝法や」
「…ほう?ま、それじゃやってみればいい」
そう言うとタカムラは、玉を1個取った。
レツマが3個、タカムラが1個、レツマが3個、タカムラが2個、レツマが2個と推移したところで、レツマはふと気付いた。
(…あれ?なんや可笑しいで?)
「そんじゃ、1個貰うぜ」
タカムラが1個取って、机上には残り8個となる。
「え…?な、なんで8個になってんねん?!」
「さあ、お前の番だぜ?」
「……降参や」
レツマは、口惜しそうに呟いた。


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