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Keys Quest

第6話
森の中で一行は、現れるモンスターを倒しながら進んでいました。
華麗な剣技を繰り広げるレツマと、「見習い」な魔術で必死に彼をフォローするトモユキ。
しかしタカムラは、本当にピンチな状態になるまで、2人の後ろで戦いを眺めているだけでした。
そんな戦いが幾つか続いた後、トモユキは遂に音を上げたのでした。

「あ、あの…タカムラ様…?」
「何だ?」
「な、なんで全然、助けてくれないんっスか…?さっきとか、本当に死ぬかと思ったっス…」
「…勝手に頼ってくんじゃねえよ」
タカムラはそっぽを向いて歩き出す。
「ちょ、ちょっと…っ!」
後を追おうとするトモユキの肩を、ふとレツマが掴んだ。
「…え?」
「ま、あいつも素直な奴やないからしゃあないけど」
レツマは小さく、なおかつあたたかく微笑んでいた。
「ど…どういう、意味っスか…?」
「つまりやな、タカムラ君は、君のレベルアップを企んでんねん。彼にとって君を助けることなんか朝飯前やけど、折角の君のチャンスを潰したったらあかんて思てんねや。せやから、分かったって、な」
「そ、そうだったんっスか…僕、全然気付かなくって…」
トモユキの瞳が一気に潤む。
「まあ、これから鍛錬に励むこっちゃ…ん?」
レツマは、先を進んでいたタカムラが急に足を止めたのを見た。
「ど、どないしたんや、タカムラ君?」
「…聴こえる」
「え?」
ぽつりと漏れ出るくらいに小さく呟いたタカムラの声を聞き取ろうとして耳を澄ましたレツマの耳に、鬱蒼とした森の中には似つかわしくない、音楽が聴こえてきたのだ。
「こ、これは、一体…?」
トモユキもふっと顔を上げる。
「弦楽器…ギターか?」
タカムラは、音の聴こえる方を目指して道なき道を進み始めた。
「お、おい、ちょう待てってタカムラ君!」
レツマとトモユキは、音を頼りに彼の後をついていく。

「…あの明るくなってる方から聴こえてくるな」
3人はようやく繁みを抜けた。そして、そこには一人の青年が居た。
大きな木の下に座り込んだ青年は瞳を閉じ、あぐらの上のギターを爪弾いていた。
そして、3人の気配に気付くと、指を止めることなく眼を開け、3人を見上げた。
「あら、こんなとこでもお客は来るんさね」
「…君は、何者や…?」
レツマはきょとんとしながらも尋ねた。そして、トモユキがふと呟く。
「もしかして…吟遊詩人、とか…?」
「お、ご明察」
青年はギターの音を止める。
「俺はトキヤ。とりあえず身分は吟遊詩人って言われてるさ。よろしくw」

「吟遊詩人ねえ…なんでそんな奴がこないなトコで歌っとんねん?」
怪しみの表情を見せながら言うレツマ。
「なんでって、たまたま気が向いたからさ」
と答えたトキヤはふとレツマの顔を見上げ、いかにも納得していない様子であることに気付く。
「ホントだって。俺、色んなとこを旅して歌とか作ったり歌ったりしてんだけど、その旅の途中で歩き疲れて此処に座ってたら、なんとなく歌いたい気になったから歌ってただけさ。なんか悪いさ?」
「あ、いえ、そういうわけじゃ…」
とりあえずフォローに廻るトモユキ。
「つーか、俺に言わせりゃおたくらの方が怪しいんだけど。見るからにただの旅人パーティーっつー感じしねえんだけど、あんたら何モンさ?」
「あ、えっと、僕たち、チトセ山に居る魔王を倒して、囚われた姫様を助け出す旅をしてるところなんっス。こちらは竜騎士のレツマ様と、大賢者のタカムラ様。僕は王に仕える見習い魔導士のトモユキと申しますっス」
「ふーん…大変そうさね」
トモユキの語りに、トキヤはさほど驚くふうでもなくギターをいじっている。
と、その時、トモユキはふと思いついたようにレツマに囁く。
「あ、あの…僕思ったんっスけど…」
「ん?何や?」
「あのトキヤって人、一緒についてきてもらうっていうのはどうっスかね…?」
「え?」
「ほら、吟遊詩人って色んなところを旅してるっスから、色々役立つ情報を持ってるかも知れないっスし、僕らを助けてくれるスキルも持ってるんじゃないかと思って…」
「あー、まぁ確かに、それはあるかも知れんなぁ…それに、人数多いほうが楽しいやろしw」
そんなわけで、トモユキがトキヤに交渉してみる。
「あ、あのー、トキヤさん…」
「んー?リクエストかなんかさ?」
依然トキヤはギターをあれこれいじっている。
「あ、いえ、そうじゃなくって…僕らと一緒に旅してみたりしませんか…?」
「え?」
トキヤは顔を上げた。
「はい、その…トキヤさんに協力してもらえたら、千人力だなーって思って…」
「んー…別に俺、そんなにすごい奴でもないけど?」
再びギターの方に目を遣るトキヤ。
「そ、そんなことないっスよ!それにほら、此処でこうして出会えたのも何かの縁っスし…」
「縁ねぇ…」
トキヤは、また、トモユキのほうを見上げる。
「まあ、俺も暇っちゃ暇だし、別に行ってもいいさ」
「ほ、ホントっスかっ?!」
「ああ、但し…俺らの出すクイズに答えられたらな」


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