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Brotherhood


File3 〜認められた罪〜
「ああ、そうか、うん、ありがとう、ああ、じゃあ」
羊谷刑事は携帯電話を切った。
「篁君、茜もあの日学校が終わった時刻が3時50分頃だと言うことだが…どういうことなんだ?」
「そういうことだよ」祥一郎は飲み残しのシェイクを飲み干して言う。「あの日、やはり茜は楠木と棟方に追い掛け回されていたんだ」
「で、でも…」知之が言う。「茜さんが死んだのは午後4時頃だって…」
「羊谷刑事は知ってるだろ?運動をした後急に死亡した場合、筋肉凝固は通常より早く出てしまうって」
「え?ああ、確かそう警察学校で習ったが…」羊谷刑事は祥一郎の言わんとしていることに気付いて言った。「そ、それじゃあ…」
「そういうこと。茜さんが本当に死んだ時刻は、学校を出た時刻から推測して4時20分頃だったが、今言ったような理由で20分ほど早く出てしまったってことだよ」
「なるほど…それじゃあ二人の証言は本当だったと…」
その時、羊谷刑事の携帯電話が鳴った。
「はいもしもし、あ、勝呂君か…うん、うん、そうか、よし、わかった」
携帯電話の電源を切って、羊谷刑事が言った。
「篁君の言うとおりのようだ。タクシー運転手の木谷の意識が回復し、事情聴取をしたところ、事件の起きた時刻はやはり4時20分頃だということだ」
「すっごーい、祥一郎くん
祥一郎に賞賛の意を尽くすつかさ。祥一郎の隣の席でオレンジジュースのストローを銜えている知之は、その様子をただ眺めていただけだった。

知之は回想をやめ、足を止めた。もう夜の帳(とばり)が降り、安っぽい街灯が弱々しく暗い道を照らしていた。知之は、目の前に聳(そび)え立つ2階建ての家屋――彼が、母の汐里と兄の祥一郎と暮らしている家――の一つの部屋の窓から零(こぼ)れる灯りを見上げた。彼は大きく深呼吸をすると、その扉を開いた。
「ただいまー」


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