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クリスマス・パニック?!

第2話 Chain of the Past
食料雑貨店、パソコンショップ、画材店など凡(おおよ)そデートコースっぽくない数軒の店を廻った後、烈馬らが予約していた店に行く時間となった。
「この階、レストランとか幾つもあってどれがどれだか分からなくなりそうっスね…」と知之。
「予約してる店は確か"ラグナロク"だったわね…えーっと…」立ち並ぶレストランを見て廻るつかさ。「…あれ?」
「どうしたんっスか?」
「ほら、あそこ…」つかさが指差したのは1軒のファミレスの中だった。「あれ、秀俊クンじゃない?」
「え…?」知之も窓から覗き込む。其処には、テーブル席で誰かと話をしている弥勒 秀俊の姿であった。「あ、ホントっスね…」
「何やってんのかしらね?」とつかさ。「なんかオジサンと一緒だし」
「オジサン…?」知之は角度を変えて見てみる。そして、そのオジサンが誰であるかを知った。「あっ…吉田先生っス!」
「え?先生なの?」
「うん、僕らの数学の先生で、弥勒君や矢吹君の担任なんっスよ」と知之。「でも、何んで吉田先生と弥勒君が…?」
「あのー…」
「え?」後ろからの声に振り向く2人。其処にはウェイター姿の青年が立っていた。
「ウチの店に何か…?」ウェイターは怪訝そうに言う。
「え…」よく見ると、周囲の人たちが2人を白い目で見ていた。
「あ、す、すみませんっス!」2人は赤くなりながら一目散にその場を立ち去って行った。
数秒後、その道を今度は怪しげな母子が走っていった。(笑)

「ふぅ、何とかお店見つかったっスね…」
イタリア料理店"ラグナロク"のテーブル席に座っている知之とつかさ。(ちなみに既に注文済)
「ホント、一時はどうなるかと思ったわよ」笑いながら言うつかさ。
しばしの沈黙。
(ヤバイっス…何とか話題を探さなきゃ…)焦る知之。半分パニくりながら言う。「つっ、つかささんって、今までどんなヒトと付き合ってきたんっスか…っ?」
後から思うと、何でこんな話題をしたんだろうと思う程訳の分からない質問をしてしまった知之。彼らのすぐ後ろの席で耳を傾ける汐里も、"何でそんな質問なのよ"と小一時間問い詰めたくなった。
「あたしの、元カレ…?」つかさの表情が少し暗くなった様に感じたのは、知之だけでなく汐里もそうであった。「…あんまり、イイ思い出じゃないかなぁ」
「え…?」
「元カレね、了(りょう)って言うんだけど、あたしが中学の時に同じクラスで、17の時にひょんなコトから付き合い出したのよ。初恋だったわ。で、半年くらい経った時かな、或る夜突然あたしの部屋に了が来て、真っ暗な部屋であたしに無理矢理…」言葉をつぐ噤むつかさ。「…暗かったから顔は分からなかったけど、体格とか彼のつけてた香水から了だって分かったの。必死で抵抗して、了の胸元に引っ掻き傷作って追い出してやったんだ…で、其れっきり了には会ってないの」
返す言葉が見つからない知之。
「それからはもう、誰とも付き合ってないの。どんなに優しそうなヒトでも、そんな風に牙を見せるんじゃないかって思って…」とつかさ。「…あ、ごめん、こんな暗い話しちゃって」
「う、ううん、いいっスよ…」知之は笑顔を繕う。
丁度その時、料理が運ばれてきた。
「お待たせしました、鶏肉とホウレン草のペペロンチーノです」
「わー、美味しそう!」満面の笑みを浮かべて言うつかさ。「先食べるね」
「う、うん…」知之は、幸せそうに笑うつかさを少し哀しげな目付きで見ていた。

「男性不信…かぁ」
ピザにかぶり付きながら言う汐里。「知之にとっちゃ、かなりのショックねぇ…出る幕が失くなっちゃったワケだもん」
「…そだな」と祥一郎。
「おまけに相手はまるで気にしてないかの様子だし…知之にはかなりキツイ状態になっちゃったわね」
「ああ…っておい、オレの分まで喰うなよ!」

その後、更に数軒買い物をして廻った知之とつかさ。余りに色々な店を廻っていたため、汐里と祥一郎は2人を見失ってしまった。
「全く、何処行っちゃったのかしら…」吹き抜けになっている8階の渡り廊下の上に居る汐里と祥一郎。
「あっ、居たぜ」
「え?何処?」
「ほら、1つ下の階のエスカレーターんトコ」祥一郎が指差したのは、下りのエスカレーター乗り口の近くにあるベンチに腰掛けて休んでいる2人の姿であった。
「あ、ホントだ」と汐里。「でもどうしよう、エスカレーターは混んじゃってるし、此処からだとちょっと遠すぎるしなぁ」
「…エスカレーターの横にある階段は無視かよ」祥一郎が軽くツッコむ。「みんなエスカレーター使っちまってっから空いてんぞ」
「最近あたし足腰弱いんだもん、あんな階だ…」その瞬間、汐里の表情が凍った。
祥一郎は振り返ると、その階段を転がり落ちている女の姿を見た。
「なっ…?!」そして祥一郎は、階段の上に居たコート姿の人物が逃げていくのを見た。「逃がすかよ!」
次の瞬間、祥一郎は条件反射的にその男を追いかけて走っていた。
「しょ、祥一郎?!」次の瞬間、汐里の周囲には多くの悲鳴が聞こえた。先刻の女が、知之とつかさの目の前に落ち、頭から血を流していた。
「きゃああぁぁっっ!!」つかさは目の前で起きた出来事に恐怖を感じ、知之に抱きついた。
「こ、これは……?!」その女の姿に、凍りつく知之。余りの恐怖に、自分が今つかさに抱きつかれているという超ラッキーな境遇にあるということに気付かなかった。

「亡くなったのは寺田 真紀さん、30歳。このビルの8階と9階に会社を構える御堂(みどう)物産に勤務していた、と…」現場に駆けつけた刑事、勝呂が言う(ちなみに勝呂がまともに登場するのは「Happy?!Birthday」以来)。
「此処で少し休憩していたら、この階段の上から転がり落ちてきた、というコトですね」もう一人の女の刑事、柏木が言う。
「は、はい、そうっス…」と知之。
「うーん…事故か事件かも分からないですね…」と勝呂。「他に目撃者が居れば…」
「これは100%事件だぜ」
「え?」振り向く一同。其処には、3人の男を従えた祥一郎の姿があった。
「にっ…篁君?!」びっくりする知之。「ど、どうして此処に…?!」
「ま、まぁ母さんとたまたま此処に居ただけなんだけどよ」後ろには汐里も居る。まさか尾行してたなんて言えない。
「で?事件だって言う根拠は何ですか?」柏木が言う。
「簡単だよ、オレや母さんが、その女性が突き落とされるトコを見てたんだ。で、突き落とした奴が逃げてくのを見て、その後を追ったら男子トイレについた。そのトイレに居たのがこの3人だ。生憎(あいにく)、顔は帽子で見えなかったし服も違ってるから、3人の内誰なのかは分からないけどな」
「へ、へぇー…」驚く柏木。
「相変わらず手際がいいですね、篁さん!」尊敬の眼差しを向ける勝呂。
「ハハ…ま、まぁな…」苦笑いする祥一郎。
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おまけ
つかさの過去が明らかに。
なお実はこんな設定はつい最近までなかったです(爆)。
イタリア料理店の名前は結構悩んだ挙句つけたんですが、虹星に「イタリアじゃないじゃ…?」とツッコまれてしまいました^^;
北欧神話で「神々の黄昏」とかいう意味みたいです。某ネットゲームとか某神様系探偵マンガの新シリーズとかで耳馴染みかも。
勝呂刑事は割と久々ですが、柏木刑事はもっと久々ですな。てか覚えてないヒトの方が圧倒的に多そう^^;
「ライヴァル」でちょこっと出てます。探してみてくださいな(爆)。

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