Keys Quest
第10話「え、レツマ様…?」
レツマの突然の発言に、トモユキらパーティーはきょとんとなる。
「…な、何言ってんのあんた?わたしはあんたの荷物を盗もうとした盗賊なんだよ?そんな女を旅に連れてくなんて、あんたどういう神経してんだ?」
ミホはミホで、唐突な勧誘に動転する。
「おい、まさかお前…」
トキヤが恐る恐る言葉をかける。
「ああ」
「まさか、その娘に一目惚れしたんじゃ…」
「ちゃうわっ!!」
顔を真っ赤にして、レツマはトキヤをハリセンではたく。
「俺には残念ながら相手がおるからなっ。そーやのうて…この娘の身体能力を買うてるんよ」
「え…?」
ミホは訳が分からないという表情でレツマを見上げる。
「ほら、このパーティーって俺以外はあんま先頭切って物理攻撃していくようなメンツちゃうやろ?せやから格闘系の人もおったらええなあとか思てたところやったんや。で、さっき俺らから逃げてたこの娘、どうやら身体能力がずば抜けとるみたいやし、”好きにしな”とか言うてくれたし、ちょっと勧誘してみよかなと思て」
「…てことは何?わたしに盾にでもなれって言うのかい?」
不機嫌そうな顔のミホ。
「いやー、そういうつもりでもないねんけど…でもほら、魔王を倒しに行くにはやっぱそういう人材が要るかと思て…」
「ま、魔王っ?!」
ミホはその言葉を聞いて、急に立ち上がりレツマの胸倉を掴んだ。
「何、あんたら、あのミロクとかいう魔王を倒しに行こうとしてるってわけ?!」
突然語気を荒げるミホに、レツマは圧倒される。
「あ、ああ…その、つもりやけど…」
「…なんだい」
ミホは手を離し、少し視線をそらして言う。
「それならそうと、最初から言ってくれれば素直についてってやったのに」
「…え?」
「そ、それって、どういう…?」
「…わたしには、兄貴が居るんだ」
ミホは視線をそらしつつ言う。
「だけど、兄貴は今、魔王の巣喰うチトセ山に居るの」
「ま、まさか、ツカサ姫みたいに連れ去られたってことっスかっ?!」
思わず大声を上げて驚くトモユキ。
「…あんたらがわたしを必要とするんだったら、行かせて」
ミホの声は凛としていた。
「…お願い」
「ああ、よろしゅう頼むわ」
新たなメンバーを迎えたパーティーは、さっきまで居た賑やかな大通りに出てきた。
「さてと、んじゃ、行きますかねー」
伸びをしながら言うトキヤ。
「あれ?でも、なんか忘れてるような気が…」
「ああーーーっっ!!いたーーーっっ!!」
「…へ?」
突然聞こえてきた大声に振り向くトモユキ。
次の瞬間、彼に抱きつく小さい影が現れた。