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Keys Quest

第10話
「わっ、行き止まり…っ?!」
レツマの荷物を引っ掴んだその人物は、角を曲がったところで急に足を止める。
「っしゃ!ようやく追いつめたで」
息を切らしたレツマが、その人物の後ろに現れる。続けてトモユキ達3人も追いつく。
「よーし、もういいぞー」
トキヤは上空に声を投げる。すると、真上に浮いていた2人の妖精が彼の元に降りてくる。
「よしよし、お前らのおかげでつかまえられたさ。ありがとさw」
妖精に微笑みかけ、トキヤは2人の手柄を讃える。
「え?ミナトちゃんたちのおかげって、どういうことっスか…?」
「そいつらは、最初っからこの行き止まりに追いつめることを目指して、盗賊を”操って”いたんだよ」
トモユキの背後で、冷静に述べるタカムラ。
「あ、操ってた…?」
「あの子らは時々、”大通りに出ようとしている”とか言うてたやろ?それもあっちにも聞こえるように。それを聞いた盗賊サンは、俺らが大通りに先回りをして捕まえに来る筈やと踏んで、大通りとは外れる方向に逃げていく。そうやって、知らず知らずのうちに盗賊サンは見えない心理の壁を築いてって、選択肢を狭めて此処に誘い込まれたっちゅうこっちゃ」
「はい!前にトキヤさんに言われてた通りにやったんですw」
ミナトは嬉しそうに語る。
「さーてそんな盗賊サン?何か言いたいことでもあるさ?この状況じゃ、幾ら何でも逃げ切れないだろ?」
トキヤはいやらしい笑みを浮かべて盗賊に近寄る。
「…分かったよ。返してやるっ」
盗賊は荷物をレツマに投げると、その場に座り込んだ。
「自警団に突き出すなり刺し殺すなり、好きにしな」
はずれたフードから現れたその顔は、茶色いショートヘアの、少女だった。
「って、女の子っスかっ?!」
「悪かったな、女っぽくない仕事してて」
驚きのあまり思わず零したトモユキの言葉に、少女はふてくされた表情をみせる。
「あ、いや、そういう意味じゃなくって…」
「君、名前は?」
「…え?」
トモユキは、突拍子も無い質問をしたレツマのほうを訝しげに見る。
「わたしの?…ミホ・カツラギだけど。そんなこと聞いてどうするつもり?」
「ミホちゃん、ね…」
レツマはわざとらしく間を置いてから言う。
「ミホちゃん、君、俺らと一緒に旅せえへんか?」
「…は?」

「え、レツマ様…?」
レツマの突然の発言に、トモユキらパーティーはきょとんとなる。
「…な、何言ってんのあんた?わたしはあんたの荷物を盗もうとした盗賊なんだよ?そんな女を旅に連れてくなんて、あんたどういう神経してんだ?」
ミホはミホで、唐突な勧誘に動転する。
「おい、まさかお前…」
トキヤが恐る恐る言葉をかける。
「ああ」
「まさか、その娘に一目惚れしたんじゃ…」
「ちゃうわっ!!」
顔を真っ赤にして、レツマはトキヤをハリセンではたく。
「俺には残念ながら相手がおるからなっ。そーやのうて…この娘の身体能力を買うてるんよ」
「え…?」
ミホは訳が分からないという表情でレツマを見上げる。
「ほら、このパーティーって俺以外はあんま先頭切って物理攻撃していくようなメンツちゃうやろ?せやから格闘系の人もおったらええなあとか思てたところやったんや。で、さっき俺らから逃げてたこの娘、どうやら身体能力がずば抜けとるみたいやし、”好きにしな”とか言うてくれたし、ちょっと勧誘してみよかなと思て」
「…てことは何?わたしに盾にでもなれって言うのかい?」
不機嫌そうな顔のミホ。
「いやー、そういうつもりでもないねんけど…でもほら、魔王を倒しに行くにはやっぱそういう人材が要るかと思て…」
「ま、魔王っ?!」
ミホはその言葉を聞いて、急に立ち上がりレツマの胸倉を掴んだ。
「何、あんたら、あのミロクとかいう魔王を倒しに行こうとしてるってわけ?!」
突然語気を荒げるミホに、レツマは圧倒される。
「あ、ああ…その、つもりやけど…」
「…なんだい」
ミホは手を離し、少し視線をそらして言う。
「それならそうと、最初から言ってくれれば素直についてってやったのに」
「…え?」

「そ、それって、どういう…?」
「…わたしには、兄貴が居るんだ」
ミホは視線をそらしつつ言う。
「だけど、兄貴は今、魔王の巣喰うチトセ山に居るの」
「ま、まさか、ツカサ姫みたいに連れ去られたってことっスかっ?!」
思わず大声を上げて驚くトモユキ。
「…あんたらがわたしを必要とするんだったら、行かせて」
ミホの声は凛としていた。
「…お願い」
「ああ、よろしゅう頼むわ」

新たなメンバーを迎えたパーティーは、さっきまで居た賑やかな大通りに出てきた。
「さてと、んじゃ、行きますかねー」
伸びをしながら言うトキヤ。
「あれ?でも、なんか忘れてるような気が…」
「ああーーーっっ!!いたーーーっっ!!」
「…へ?」
突然聞こえてきた大声に振り向くトモユキ。
次の瞬間、彼に抱きつく小さい影が現れた。


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