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Keys Quest

第9話
4人の男と2人の妖精という顔ぶれになったパーティーは、森の中を進んでいました。

「そういえば…トキヤさんって15歳って言ってたっスよね?」
「ああ、そうだけど?」
「実は僕、いま16歳なんっスよ。てっきり年上なのかなーとかって思ってたんっスけど…」
「あ、そうなのさ?なんだー、じゃあ”さん”とかつけなくていいさ。ふつーに呼んでくれよ」
「あっ、はいっスw」
「あ、えっとトモユキ君…?」
「はい?何っスか、レツマ様?」
「ちょっと言いにくいねんけど…俺も16歳やねん」
「へー、じゃあ同い年なんっスね…って、えええっ?!」
「ああ、ついでにタカムラ君も16なんやけど…」
「そ、そんな、僕とタメだなんて…じゃあ竜を退治した時ってお二人は13歳?!」
「へー…あんたらそんなすごい人だったのかー」
「ま、まぁそういうわけやから、俺らのこともふつーに呼んでくれて構へんよ」
「え、あ、え、でも…」
「…まぁ、呼びづらかったら今までどおりでもええけどな」
「す、すみません…」

と、ふと視線をそらしたトモユキは、妖精の1人、ミナトがずっと自分を見ていることに気がつきました。

「あ、あのー…僕の顔に何かついてるっスか?」
「あ、いえっ、そうじゃなくって…その…」
「え?」
「…どうせあれだろ?一目惚れとか…」
「もうっ、カイトったらそういうホントのこと言わないでくださいよおっww」
「えっ、ひ、一目…?」
「あ、はい、その…トモユキさんのこと、好きなんですっ…!!」
「って、えええっ?!」
「さっきから驚いてばっかだな、お前」
「あー、でも、トモユキ君には既に好きな人おるからなあ」
「大丈夫ですっ、私、二股かけられてもがんばりますから!」
「なんの意気込みさ、それ…」
「あ、え、でも…あっ、ほら、町が見えてきたっスよ!」
「そんな分かりやすい誤魔化し方かい」

そうして一行は、次の町に辿り着くのでした。
その町、シューブンは、交通の要所となっていることもあり、人や店が多く賑っていました。

「わー、随分大きい町っスねー」
「まぁ、城の周りも十分活気付いとったけどな」
そんな彼らに、近付いてくる影があった。
「ねーねーおにーさん達ー」
「え?」
振り向くトモユキ。そこには、ネコの耳やしっぽのようなものをまとった少年が立っていた。
「あ、えっと…どちら様…?」
「んっとね、オレ、ぎょーしょーにんやってるんだけどお、なんか買ってって欲しいなのお。おにーさん達たびびとさんでしょお?」
「行商人?随分お若い人さねえ」
からかい気味に言うトキヤ。
「そんなことないよお、オレこれでもじゅーごだよお?」
「えっ、タメ?!」
トキヤは驚いた、というか若干ヒキ気味になった。
「ま、まあまあ…とりあえずこれから大きい町は通らんのやろ?やったら此処で色々買い揃えといたほうがええやろ。何売ってくれるん?」
「んっとねえ、やくそーとねえ、おくすりとねえ、たべものとねえ…」
「…とりあえず回復系っちゅうことやな。まあ買うといて損は無いやろから…」
手荷物に手を伸ばすレツマ。だが、その手は何をも掴めない。
「あ、あれ…?荷物が…」
「あっ、レツマ様、あれ!」
トモユキが指差した先には、レツマの持っていた荷物を手にして突っ走る人物の姿があった。
「なっ、泥棒っ?!」
「待てーっ!!」
その後を追って走り出すレツマとトキヤ。
「あ、えっとお…おかいものは…?」
「あ、ごめんなさいっス、また後で買うっスから…」
トモユキは少年に深々と謝罪をしながら走っていく。タカムラは、面倒臭そうに後をついて行った。
「ふぇえ、ちょっと待ってよおー」
少年は泣きそうな顔で立ち尽くすままだった。しっぽは悲しそうに垂れ下がっていた。

「ちっ、すばしっこいなあ…」
自分の荷物を掠め取った人物を全速力で追いかけるレツマ。
相手は狭い路地を右に左に曲がりながら逃げていく。
「土地勘無いし服で顔見えへんし、このままやと逃げられてまう。あん中には王様からもろたお金とかも入ってんのに…」
「んじゃ、俺に任しといて」
「へ?」
彼の横を走るトキヤは、すぐ傍を飛んでいた2人の妖精にアイコンタクトをする。
「分かりましたっw」
妖精の姉、ミナトはそういうと、弟のカイトと共に上方へ飛んでいく。みるみるうちに建物より高いところまで達した。
「次の角を右です!」
上空から聞こえてくるミナトの大声。
「あっ、その次左です、たぶんその先の大通りに出ようとしているみたいです!」
「な、なるほど…ミナトちゃんたちに、道案内してもらうってことっスね…」
ようやく2人に追いつくトモユキ。息を激しく切らして今にも倒れそうだ。
「どこかの世界で使われてる”カーナビゲーションシステム”とかいうものに似てるな」
その後ろからついて来ているタカムラが、涼しい顔で言う。
「で、でも…あれだけ大きな声で言ってたら、泥棒さんにも気付かれるんじゃ…?」
「だーいじょうぶだって。絶対捕まえれるさ」
トキヤは自信満々な顔で言った。
「あっ、右に曲がって大通りに出ようとして…じゃなくて左に曲がりました!」


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