Keys Quest
第11話「…っと、ほなこんだけ薬草と薬と常備食もらおか」
結局行商人の少年とやり取りを行うレツマ。
「ありがとー☆んっとねえ、じゃあ…これくらいでー」
値段を提示する少年。
「っておい、これ高ないか?!ぼったくりとちゃうやろな?」
「えー、ぼったくりちゃうよおー。だいたいこんなもんだよお」
何時の間にかレツマの喋り方が少年にも伝染しているらしい。
「…ったく、しゃーないなあ…ほれ」
荷物の中からお金を出すレツマ。
「わあっ、ありがとーなのお☆」
満面の笑みを見せる少年。
「これで満足したか?ほなそろそろ俺ら行くで」
「うん…ふぁ、ちょっと待って」
「ん?まだなんかあんのか?」
嫌そうな表情のレツマ。
「んっとねえー…」
少年は自分の荷物をまさぐると、1枚の鏡を取り出した。
「ん?何っスか、その鏡?」
トモユキも鏡を覗き込む。だが、その鏡は真っ黒で、彼の姿は映っていない。
「あのねえ、これ、オレのおともだちのぎょーしょーにんからもらったんだけどお、”けんりのかがみ”ってゆうんだってえ」
「”権利の鏡”…?」
「うん。でもねえ、なんかなんにもうつんないし、持っててもかさばるだけだから、せっかくだからおにーさんたちにタダであげちゃうなのお」
「折角ておい…」
「んじゃ、オレはこれでかえるねえ。ばいばーいっ☆」
少年はレツマの手に無理矢理鏡を握らせると、走ってレツマたちから去っていった。
「お、おいっ、こらっ…」
レツマは鏡を持ったまま呆然と立ち尽くしていた。
「ありゃどう見ても、厄介モンを押し付けてった感じさね」
トキヤはあきれ顔で呟いた。
パーティーは一晩、町の宿屋に泊まることにしました。
そしてレツマとタカムラは、町に買出しに出ていました。
「ちっくしょ、あのネコガキめっ!やっぱぼったくっとったやないかっ!!」
道具屋の前で声を荒げるレツマ。
「やっぱりふつーにこういう店で買うたほうが安くあがっとるし。かわいい顔してやりやがったなあいつ」
「ま、そういう悪知恵が働くから行商人とか務まってんだろうけどな」
冷静にツッコむタカムラ。
「それよりレツマ、お前、気付いてたか?」
「…”さっき”の、か?」
レツマは、タカムラの目を見ずに言う。
「確かにあの”違和感”は見逃せへんかったけど…ということは、や」
「ああ…”あいつ”は少なくともオレ達を騙してるってことになるよな」
「…とりあえず動きには警戒しとくか」
二人は人ごみの中を歩いていった。
「遺跡、っスか?」
一方残りのメンバーは宿屋で、宿の女主人・ヒロノに話を聞いていた。
「うん、そうよ。ここからチトセ山だったらほとんど直線的に行く最短ルートもあるにはあるけど、あのへんは手ごわいモンスターがたくさん出てくるって有名だから…」
ヒロノは地図を指差しながら言う。
「ちょっと遠回りにはなるけど、こっちのルートを通ったほうが安全だと思うよ。ほらここ、古い遺跡があるんだけど、ここを経由するように行ったほうがいいんじゃないかしら」
「へー、流石は一人で宿を切り盛りしてるだけはあるさ」
「まあね、あなた達みたいな旅人はよく泊まるし。でも、あの山は危ないって聞くけど、本当に大丈夫なの?」
トモユキは、少し間を置いてから口を開いた。
「…たとえ危なくても、僕は行かなきゃいけないんっス。大切な人を、助け出すために」
「…そっか」
ヒロノは、小さくかつ優しく微笑んだ。