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Keys Quest

第2話
その夜、トモユキはレツマの家に泊まり、チヒロの手料理を味わいました。
そして翌日、国王に挨拶をするため、レツマとチヒロはトモユキに連れられて城に向かうのでした。

「んー、にしてもこんなカッコすんの久々やなあ」
レツマは謁見したらそのまま旅立つつもりだったので、剣などの武器をばっちり装備していた。
「それは、3年前と同じ装備なんっスか?」
尋ねるトモユキは、昨日着ていたのと同じ、魔導士の正装のマント姿だった。
「ああ。まぁ、着るんも3年ぶりっちゅうことになるんやけどな」
「よく言うわよー、武器の手入れとかマメにしてたくせに。剣技だって毎日やってたじゃない」
笑いながら言うチヒロは、いたって普通の軽装であった。
「え、そうなんっスか?」
「あーもう、そういうこと言うなや恥ずかしい…あ、ほら、もう城見えてきたで」

3人は大きな大きな城の中に入っていきました。
謁見の間で3人を待っていたのは、キーズ国のソーシ王と、王妃のシオリでした。

「ご無沙汰しております、王様」
片膝をつき、臣下の礼をとるレツマ。
「ああ、久し振りだな…お前にその”竜騎士”の称号を与えて以来になるか」
王は小さく微笑んで言った。
「そうですね…それで王様、例の魔王のことですが」
「ああ…お前がその姿で此処までやって来たということは、行ってくれるということだな」
「はい。ツカサ姫は私が取り戻して参りたいと思います」
「宜しく頼むぞ。ツカサは我々の大切な娘だからな。必要なものがあれば何でも言ってくれ。金でも武具でも、何でも用意してやろう」
「ええ…ですが武具は使い慣れた物の方が戦いやすいので…代わりと言っては何ですが」
「何だ?」
「この、トモユキという魔導士を同行させたいのですが、宜しいでしょうか」
「えっ…トモユキを?」
思わず口を開く王妃。王も驚きの表情を見せる。
「ええ…先程彼本人とも話を致しまして、彼が適任かと存じました」
「し、しかしだな…そいつはまだ見習いの身だぞ?」
「分かっております。しかし…」
その時、トモユキが口を開いた。声は少し震えていた。
「あ、あのっ…ぼ、僕を、どうか行かせてくださいっス…っ」
「トモユキ…」
「僕の目の前で姫様は連れ去られたんっス…だから、竜騎士様だけに任せるなんて無責任なことはしたくなくて…微力ながら、僕に出来ることをしたいんっス…!」
しばしの沈黙。そして、王の低い声。
「…よかろう」
「えっ、あなた?!」
王妃は戸惑いながら王のほうを見る。
「そこまで言っている奴を、我々が拘束するわけにもいかないだろう。お前も、頼むぞ」
「は、はいっ!ありがとうございますっス!!」
トモユキは深い深い礼をした。

「それじゃあ、もう行っちゃうんだね」
城の門のすぐ外。レツマとトモユキと、それに向かい合っているチヒロ。
「ああ…しばらくチヒロに会えんなるんは淋しいけどな」
「うん、でもまぁ、畑はしっかり守るし、レツマはお姫様を救い出してよ。あ、でも、お姫様に恋したりしちゃ許さないからねw」
「大丈夫やって。俺はチヒロ一筋やし、どんなにお姫様が綺麗くても、お姫様はトモユキ君のものやしw」
「って、ちょっ、な、何言い出すんっスかっ…?!」
顔を真っ赤にするトモユキに、レツマはいたずらっぽい笑顔を見せる。
「ま、そんなわけやから、行ってくるわ」
「うん、行ってらっしゃ…」

と、その時。
「ちょっと待って!」

「え?」
3人は声のした方を向いた。
そこには、息を切らした王妃、シオリの姿があった。
「お、お妃様…?!ど、どうして此処に…?」
とりあえず敬礼をするものの、眼を丸くしているトモユキ。他の2人も同じ表情だ。
「旅立ちの前に、貴方に、渡したいものがあって…」
「ぼ、僕にっスか…?」
戸惑うトモユキの手に、王妃は何かを渡した。
「これは…ペンダント?」
「うわー、大きな宝石がついてて綺麗ー…」
レツマとチヒロはトモユキの手の中のそれを覗きこむ。
「このペンダントは、必ず貴方を助けてくれる筈だから、肌身離さず持っていて」
王妃はトモユキをしっかり見詰めて言った。
「で、でも、なんでこんな高価そうなモノを、僕なんかに…?」
「そらまあ、大切な娘さんを救い出しに行くんやからやろ。親心ってやつや」
「あ、そ、そっか…あ、じゃ、じゃあ、有り難く頂戴致しますっス…」
トモユキはペンダントを首につけた。
「…よしっ、ほな、今度こそ行ってくるわ」
「うん、武運を祈ってるわ、レツマ」
チヒロはレツマに小さくキスをした。
「あ、それじゃあ、僕も、行って参りますっス」
「ええ、気をつけてね…」
王妃はトモユキに小さく微笑みかけた。

そうして、このデコボココンビは旅立ったのでした。

「それでは、貴女は城で擁護させましょう。貴女も魔族に襲われるかも知れないし」
二人の背中を見送った王妃はチヒロに言った。
「あ、いいですよお、私畑の世話とかもありますしー…それに」
チヒロは空を仰いで言う。
「行きたいところが、ありますから」


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