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Keys Quest

第8話
「「15歳」」
「…えっ」
二重の声に振り向くトモユキ。自慢げな表情のレツマと、いつも通りしれっとした表情のタカムラが居る。
「え、な、なんでそんな早く答え出せちゃうんっスかっ?!予見?魔法っ??」
「落ち着け、トモユキ君;」
レツマは混乱気味のトモユキをなだめながら言う。
「せやなー…ほな先に、俺らがなんでこない早く答え出せたか説明しよか?」
「え…?」
「1巡目の発言は置いといて、2巡目と3巡目の発言だけで考えるとしたら、3人のうち誰が正しいことを言っているかを仮定して、それで矛盾が出るか答えが出るかを検査してみれば、そのうち答えは出ると思わへん?」
「そ、そうっスね…」
「ちゅうことは、や。このクイズは時間さえかければ答えが導けるんや。せやから彼は解答時間を10秒と極端に短く制限してみせたっちゅうこっちゃ」
「な、なるほどー…」
「で、これを逆に考えれば、10秒しかないんやったらとりあえずさっさと”誰が嘘をついてるか”を判定してしまえば少しは早く解けるっちゅうことになるやろ?せやから俺らはさっさとそこから考えてたんや」
「え、で、でも、どうやって…?」
「それは簡単だぞ」
タカムラが面倒臭そうに口を開く。
「1巡目の発言だけで、それは判定できる」
「ど、どういうことっスか…?!」
「1巡目の発言は、ミナトが『カイトは本当のことを言っている』、トキヤが『ミナトは嘘をついている』、カイトが『自分は本当のことを言っている』だったよな。このゲームの大前提は”本当のことを言っているのは1人だけ”の筈だが…この中で1人だけ、明らかにその前提条件に背く発言をしている奴が居るだろ?」
「え?…あ、そ、そうか!ミナトちゃんっスね!」
「ああ。ミナトの『カイトは本当のことを言っている』という発言がもし本当だとしたら、その発言内容からカイトの発言も本当となる。だが、ミナトの発言が本当だ、という仮定に立っているのだから、この時点で正しい発言をしている人間が2人になる。したがって矛盾が生じ、ミナトの発言は嘘であるということになるわけだ」
「それに、最初に”嘘をついている=事実と全く逆のことを言っている”っちゅう約束をしてくれたから、『カイトは本当のことを言っている』という発言が嘘ならばカイトも嘘を言うことになって、本当のことを言っているのはトキヤ君に限定されるっちゅうことになるんや」
「なるほどー、すごいっスねー…」
ただただ感心の溜め息を零すばかりのトモユキ。
「すごいて…//」
苦笑いで濁すレツマ。
「ほんで、本当と嘘が分かったら2巡目は楽勝やろ?カイトとミナトの発言は無視って、トキヤ君の『カイトは12歳』っちゅう発言だけ拾い上げればええ」
「だが、3巡目は一筋縄ではいかねえんだ」

トキヤと2人の妖精は、レツマ達のやり取りをただ黙って聞いていました。

「一筋縄ではいかないって、どういう意味っスか…?」
きょとんとした表情のトモユキ。
「まず、ミナトの発言(嘘だと判明済み)からは大した情報は得られへんからとりあえず放っておく。カイトの発言は事実と反対なんやから、『トキヤはミナトより1歳年上』が成り立ち、トキヤの発言から『ミナトとカイトは2歳差』も得られるやろ」
「あ、それじゃあ、『カイト君は12歳』っていう条件も足せば、ミナトちゃんはカイト君の12歳に2歳を足して14歳、トキヤさんはその14歳に1歳を足して15歳ってことになるんっスね?」
「いや、そうはいかねえよ」
「え?」
タカムラの低い声に、トモユキは一瞬戸惑う。
「な、なんでっスか?」
「トキヤは『ミナトとカイトは2歳差』だとしか言っていない。ということはミナトの年齢はカイトより2歳年下の10歳ということも考えられ、その場合トキヤは10歳+1歳で11歳。これは、さっき飛ばしたミナトの発言の裏返し『他の2人は自分と同じ歳ではない』を含めるどの条件とも矛盾しない筈だろ?」
「あ、そ、そっか…」
「まぁトキヤ君の見かけが15歳には見えても11歳には見えへん、とかそういう立証の仕方が無いとは言わんけど、それにしたって、やっぱりもっと確実な条件が1個足らんと思うやろ?せやけど君は今、何故か自信を持って1つの解答だけを導き出せた」
「え、それはたぶん、さっき2人が15歳って答えたからじゃ…?」
「いや、お前はもっと確実に『ミナトはカイトより年上だ』という前提を無意識のうちに置いていた筈だぜ」
「ミナトちゃんがカイト君より年上だという無意識の前提?…ああっ、もしかして?!」
「そうや。ミナトちゃんの自己紹介の中の発言、『私、(中略)ミナトっていいますwこっちは弟のカイト。』っちゅうんがあったやろ?姉弟は、双子だから同い年っちゅうことはありこそすれ、弟が姉より年上なんてことはありえへん。つまり、あの発言によって『ミナトはカイトより年上』っちゅう条件が前提にされ、解は1通りに決まるっちゅうこっちゃ」
「なるほどー…って、あれ?でも、ミナトちゃんは嘘を言う役だったっスよね?だったらその発言も嘘だったかも…」
「お前、オレの質問忘れてんじゃねえだろうな…」
「え…?」
「ルール説明の時、オレは『お前らのこれまでの発言に、嘘はねえだろうな?』って聞いただろ?この質問からもトキヤの返答からも、『3人の、この質問以前の全ての発言』に対して嘘はついていないという保証がなされてる。ミナトの自己紹介もこれより前の発言だったから当然これが適用され、『カイトはミナトの弟』という条件についても真であるという保証が得られてるっつーことだよ」
「そ、それじゃああの質問、そこまで考えて言ってたんっスか?わー、やっぱりすごい人っス…」
「さて、と。ほな、何か言いたいことあるかー?」
レツマはトキヤの方を向いて言う。
「…なーんも。はー、しっかりしてそーだからちょっと難易度上げたのに、まさかそれでも2人に解き明かされるなんて思わなかったさ」
諸手を挙げて言うトキヤ。妖精達に軽く目配せする。
「んじゃ、俺らもあんた達にお供させてもらうことにするさ。いいよな?」
「…ま、トキヤさんが行くって言うなら俺はいいけど?」
「私も、是非一緒に行かせてくださいw」
対照的な表情のカイトとミナト。
「ありがとうございますっス…」
トモユキは小さく呟いた。


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